京アニ放火殺人の悲劇を生んだ「爆燃現象」から我が身を守るには
死ぬか、飛び降りるか
今回の火災では多くの人が一酸化炭素中毒で亡くなったと見られている。
「人間が空気を吸って取り込んだ酸素は、血液内のヘモグロビンと結合して体内に運ばれます。ところが、ヘモグロビンは酸素よりも一酸化炭素と結合しやすいため、吸い込むと、酸素が取り込めなくなり、最初は意識の混濁や麻痺の症状が起こる。そして最後は、体内窒息という状態になって亡くなります」(同)
一酸化炭素はハンカチなどで口を覆っても体内に入り込んでしまうが、
「一般的に煙は上昇し天井に滞留後徐々に横に広がり、それから下に降りていく。その場合、床面から40~50センチほどのところに中性帯という、一部空気が残っている層がある。一酸化炭素をなるべく吸わないようにするためには、体を低くして中性帯に鼻と口の位置をもってくることが大事です」(防災システム研究所の山村武彦所長)
階下から火が上がってくる場合、心理的にはどうしても上に逃げたくなる。実際、今回の火災でも3階から屋上に上がる階段で19人の遺体が見つかっている。2階で亡くなった11人も階段に近いフロアの中央付近で発見された。
「逃げる方向は原則は下が正しい。必ず屋外に通じているからです。どうしても下に避難できない場合は、屋上に避難するのも一つの方法ではあります」
と、山村氏は話す。
「窓から飛び降りるというのも一つの手段です。2階から飛び降りても、頭を打たない限りは骨折で済む。今回の火災でも、2階から飛び降りて助かった男性社員は“死ぬか、飛び降りてケガするかの選択だった”と語っていました」
誰の身にも起こり得る今回のような悲劇。「知恵」を身に付けておけば、瞬時の判断で自分や家族の命を守れるかもしれないのだ。
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