霞が関「全面禁煙」で日比谷公園、霞が関ビル、裁判所に逃れる難民たち

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 かつて、政治家に煙草は欠かせないアイテムだった。吉田茂元総理といえば葉巻をくわえた姿が知られているし、同じく元総理の橋本龍太郎氏もヘビースモーカーだった。現職の閣僚でも、麻生太郎財務大臣が葉巻好きなのはつとに有名だし、岩屋毅防衛大臣も愛煙家である。ところが、この7月から、大臣室で先生方が紫煙をくゆらす姿は見られなくなった。

 理由を厚労省の健康局健康課に聞くと、

「受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が7月1日から施行されたことで、役所内での喫煙が禁止になったからです。霞が関は全省庁が対象。もちろん、大臣室や副大臣室、政務官室も例外ではありません。受動喫煙を防ぐためには、トップから範を示して頂くという意味もありますから」(担当者)

 そんなわけで、官庁街を訪ねても、煙草を吸っている人たちはすっかり姿を消してしまった。愛煙家の先生や官僚は、これを機会に禁煙を決意したのだろうか。あるいは少し歩くけれど日比谷公園まで出かけて一服やっているのか。

 が、中国の諺にもあるように「上に政策あれば下に対策あり」。探してみると、あった。たとえば、金融庁などの入る中央合同庁舎は、あの霞が関ビル(三井不動産の所有)の隣。

「皆さん、霞が関ビルの裏にある喫煙スペースで吸っています。合同庁舎にオフィスがある官庁の大臣も吸いにやって来たことがあって、皆慌てていました」(内閣府の関係者)

 他にも「穴場」はある。

「国会や裁判所は“第2種施設”とされ、今回は対象外。施行は来年の4月からになります」(前出・厚労省の担当者)

 訪ねてみると、裁判所ビル(霞が関)は先んじて禁煙になっていたが裏に小ぢんまりとした喫煙スペース。「受動喫煙対策」で居場所を失った“難民”はこんなところに逃れていたのだ。

 気になるのはJT(日本たばこ産業)の大株主で、葉巻好きの大臣がいる財務省である。聞けば、本省の敷地内に屋外喫煙所を設置したという。改正法では受動喫煙対策をしていれば、屋外に喫煙スペースを作れるとある。

「大臣を含め職員が喫煙する場合には、全て当該屋外施設を使用することとしています」(財務省広報室)

 麻生大臣も大臣室から降りてきて一服やるのだろうか。

「しょうがねえだろう」

 なんて言いながら。

週刊新潮 2019年8月1日号掲載

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