ジャニーズ圧力疑惑で公取委はなぜ動いたか SMAPファンは東京五輪の関係を指摘

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カギは東京五輪

 7月17日の午後8時59分、NHKはチャイム音と共に速報テロップを流した。「元SMAP3人のTV出演に圧力の疑い ジャニーズ事務所を注意 公正取引委」と画面に表示されたわけだ。

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 午後9時になると「ニュースウォッチ9」が始まり、速報の詳報を伝えた。公正取引委員会がジャニーズの何を問題視したのか、改めて確認しておこう。

 SMAPは2016年に解散したが、そのうち稲垣吾郎(45)、草なぎ剛(45)、香取慎吾(42)の3人は、翌年9月にジャニーズ事務所を退所した。

 彼らはSMAPの元マネージャーだった飯島三智氏(61)が設立した新会社に移籍。これをジャニーズ事務所は問題視した。

 ご存知の通り、ジャニーズ事務所の副社長・メリー喜多川氏(92)と飯島氏は激しい対立関係にあった。3人がテレビ番組に出演するのを防ごうと、ジャニーズ事務所は民放キー局に圧力をかけたという。これは独占禁止法に違反する疑いがある。

 本来であればテレビ局は、稲垣、草なぎ、香取の人気を分析し、彼らの商品価値を割り出してキャスティングを行う。

 3人に全く人気がなく、その結果としてレギュラー番組がなくなるのなら、何も問題はない。だが、依然として高い人気があるにもかかわらず、ジャニーズの圧力で出演機会が減少したとなると、“公正な競争”が阻害されたことになる。

 実際、それだけの権力を、ジャニーズ事務所は手中に収めている。もしテレビ局がジャニーズ事務所の怒りを買い、所属タレントの出演を拒絶されると、被害は甚大だ。ドラマ、バラエティ、歌番組と、ありとあらゆる番組に穴が開く。

 情報を入手した公取委は関係者の聞き取りを実施。ジャニーズ事務所がテレビ局に元SMAPの3人を使わせないよう圧力をかけたという問題を、《独占禁止法違反と認定できる事実は確認できなかったものの、将来的に違反につながりかねない状況があったと判断した》と報じた。

 一方のジャニーズ事務所は「圧力をかけた事実はない」などのコメントを公式サイトに掲載した。

 だが、「スッキリ」(日本テレビ系列・平日・8:00~)のMCを務める加藤浩次(50)は、「ジャニーズに限らず、周知なんですよ。大手の事務所を独立したタレントは、何年かテレビに出られなくなるのは。見ている方も気づいていると思う」と発言した。

 産経新聞は7月21日の朝刊に、社説「『ジャニーズ』注意 芸能界変わるきっかけに」を掲載。加藤の発言を紹介し、《芸能界からの勇気ある発言として耳を傾けたい》と高く評価した。

 それだけにジャニーズも、火消しに必死だとも言える。何しろ創業者のジャニー喜多川氏が、7月9日、くも膜下出血で87歳で逝去している。

 それから約1週間が経ってNHKが公取委のスクープを報じた。「ジャニーズの政治力が低下し、これまで秘密にしていた暗部が白日の下にさらされるのではないか」と多くの関係者が考えておかしくない。

 熱狂的なSMAPファンは、「公取委が注意したという報道で、ファンの間にある“分裂”が是正される動きが出てきていますよ」と話す。

「SMAPファンは、何よりも仲の良さで知られています。とはいえ、稲垣くん、草なぎくん、香取くんを応援するグループと、中居正広くん(46)や木村拓哉くん(46)のファンとは、微妙な温度差があったのは事実です。3人のファンは、どうしても飯島さんに肩入れてしてしまう。すると2人のファンが、『そこまでジャニーズの悪口を言わなくてもいいんじゃない』というような意見の相違はありました」

 誰もが大人の女性だから、自制はしている。ケンカなど起きるはずもない。とは言うものの、微妙な違和感が存在していたのも事実だった。それがNHKの報道で変わったのだという。

「公正取引委員会という立派な行政機関が、ジャニーズ事務所の問題点を指摘したわけです。中居くんや木村くんのファンの間でも『やっぱりジャニーズ事務所が、様々な形で飯島さんに圧力をかけていたのは事実なんだね』という認識が広がり、3人のファンは『やっとわかってくれたの!』って喜んでいる。そんな状況ですね」

 別のSMAPファンは、「私たちの間では、東京オリンピックが大きな影響を与えているという話です」と明かす。

「いよいよ急ピッチで東京五輪の宣伝を開始していく必要がありますが、日本の芸能界に旧態依然とした商習慣が残っているのが明らかになりました。今後、海外メディアは、日本に関する報道を増やしていきます。『日本の有名な芸能事務所、ジャニーズ事務所は、公正な競争を阻害している』などと報じられれば、芸能界の恥というより日本の恥でしょう。そうしたことを国が心配しているため、公正取引委員会が芸能界に“警告”を発したのではないでしょうか?」

 今、世論の大きな関心を集めている吉本興業だが、芸人との間に「契約書が存在しない」というのも有名な話だ。東京五輪のCMを撮影するとして、外国人のタレントと吉本所属の芸人が共演するという企画を進行させる際、外国人のタレント側が「契約書が存在しない」ことを問題視する可能性も取り沙汰されているという。

 だが本丸の本丸は、やはり「SMAPが東京五輪の期間中だけでも復活する」というプランへの期待だ。

「SMAPは解散前、東京五輪におけるパラリンピックの『公式応援サポーター』に選ばれました。ところが一部報道によると、契約は破棄されず、まだ宙に浮かんだまま生き残っているというのです。そこに今回の独占禁止法違反のニュースです。政権が東京五輪のために仲裁に乗り出し、五輪期間中だけでもSMAPを再結成させてくれる。そのためにも公取委が“先兵”になってくれたのではと期待しています」(同・SMAPファン)

週刊新潮WEB取材班

2019年7月30日掲載

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