嫌われ始めた「セブン」と愛され続ける「セコマ」 コンビニ顧客満足度の“明暗”事情

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それを可能にする北海道の人件費

 24時間営業問題で明らかになったように、コンビニ運営の上でのハードルとなるのが、深夜営業と、それに伴う人件費である。実はセコマが24時間営業を行っているのは、250店舗ほど。過疎地の店舗などは、23時には閉店してしまう。

「そもそも人のいないエリアですから、深夜人口も少ない。夜、店を開けておいても意味がないわけです。これは、セコマの店舗の8割が直営店舗で、本部が営業をコントロールできるからこそできるやり方ですね。24時間営業が当たり前の大手では、経営が成り立たないわけです。セコマは、正月には店を閉めてしまうほど。私が過去に取材したときは、半数の店舗が正月休みをとっていました。これも大手ではまず無理。また、深夜営業を行う店舗や過疎地店舗の人件費の課題は、“北海道は安い”のでクリアできます」(同・渡辺氏)

 厚生労働省の発表によれば、全国の最低賃金の加重平均額は874円であるのに対し、北海道は835円と平均以下。仮に東京のコンビニが8時間アルバイトを雇ったとすると、単純計算で最低賃金985円×8時間=7880円の給与を払うことになるのに対し、北海道であれば6680円と、1000円以上安いのだ。このあたりも、北海道限定で展開するセコマゆえの“うまみ”なのかもしれない。

 このようにセコマには、北海道ならではの特殊事情に支えられた顧客満足度の高さがあった。SNSを覗けば、今回の調査結果を受けて“セコマさすが”との声は多い。対してセブンには、批判的。中には“7Payは納期重視主義の無理がたたって、問題が生じた”なる真偽の不確かな意見もあった。

 なぜセブンは株を下げたのか。この辺り、事情通はこう耳打ちする。

「7Payの噂が本当かどうかはわかりませんけれど、セブンが色々と問題を抱えているのは確か。新商品の売上などのノルマを店舗に課した際の達成率、業界では店の“徹底力”というのですが、ローソンやファミマは、6~7割。一方、セブンは9割と高いのです。だからこそ、お客からすれば“いつ行ってもいいものが揃っているお店”と評価が高かったわけですけれど、オーナー側からすればたまったものじゃない。SNSに、ファミマやローソンオーナーの不満の声があまりないのも、そのせいです。長年、テレビを始めとしたメディアには、広告主であるコンビニを悪く報じることはタブーで、なかなか不満の声が外に出なかった。ところが、いまやネットの時代。24時間問題を真っ先に取り上げたのが『弁護士ドットコムニュース』でしたし、ネットで話題になったことをテレビが紹介することが当たり前になった。そういう時代になったおかげで、初めてセブンへの不満が表に出たわけですよ」

 だが、「裏を返せばセコマにもセブン的な要素はある」と付け加える。

「セコマもまた、取引先のメーカーへの当たりは強いと聞きますね。たとえば普通のコンビニではまず無い、売れ残った食品をメーカーへ返品する契約を結んでいると聞いたことがあります。それでなくとも、メーカー、とくに北海道の地元業者は、セコマには逆らえません。だからこそお得な値段で客にサービスできている側面もあるでしょう」

 商売は、切った張ったの世界。多かれ少なかれ、こんな話は当たり前なのかもしれない。とはいえ……取引先満足度調査、あったら結果を見てみたい。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月10日掲載

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