なぜ「出生前診断」を拡大したがるのか 新聞が報じない「命の選別ビジネス」裏事情

社会 2019年7月8日掲載

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“お前らだけで進めるな”

 3月の報道当時から「拡大はしないでしょうね」と予言していたのが、新宿外苑ミネルバクリニックの仲田洋美院長だ。何を隠そう、ミネルバクリニックは出生前診断を行う認可外施設のひとつである。

「新聞が『拡大決定』や『施設増へ』と見出しに書けば、普通の人はそうなんだ、と思うでしょう。ですが、あくまで日産婦が先走っただけに過ぎません。実際に施設の認可を行うのは、その上部組織である日本医学会なんです。もともと日本における出生前診断は、日本医師会、日本医学会、日産婦、日本産婦人科医会、日本人類遺伝学会の5団体が協力する形で導入されました。つまり、新たに指針を設けるのであれば、5団体間で調整のうえ、世間に打ち出すのが筋なのです」

 実際、5団体のひとつである日本人類遺伝学会から“反対”の声が挙がったのは先述した通り。公開された同団体の「意見表明」には、

〈(※新型出生前診断を)産婦人科医のみで実施することについては憂慮されます。NIPT新指針(案)では、事実上、産婦人科のみの連携施設でも実施が可能とされており、臨床遺伝専門医、小児科医、認定遺伝カウンセラーなどの多領域・多職種の実質的な関与は明確にされていません〉

 との文言がある。要は、あなたたちだけで勝手に話を進めるな、自分たちの仕事を軽視するのか、ということだ。さらに、認可外施設が横行するのは、そもそも検査費用が高額だから、とのツッコミも入る。

〈検査費用の低減を図ることによって、この利潤が低くなると、不適切な非認可施設はおのずと撤退していくものと考えられます。このような努力をおこなう観点を指針に盛り込む必要があると考えます〉

 企業努力しろ、というわけであるが、実際、認可施設で行う検査の費用は、ときに30万円近くにもなるとされる。対して認可外施設は比較的安く、かつ“面倒”なプロセスを省いて検査を受けることができるのだ。

 たとえばミネルバクリニックの場合、検査にかかる費用は16万円(税別)で、結果通知も早いと謳う。とはいえ、染色体の検査は、わが子、ひいては自分の一生にかかわるもの。「安い、早い、誰でも」を売りにするような病院に、任せられるのだろうか。

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