丸山桂里奈に吉田沙保里……下着になった元アスリートたちに感じる違和感の正体

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2人のアスリートが証明した、好感度という薬の副作用

 丸山も吉田も、明るい健康的なアスリートということで好感度が高いのはわかる。何かと炎上しがちな昨今だが、2人ともスキャンダルには無縁だし、問題発言もほとんどない。バラエティ慣れした今では丸山はおバカ、吉田はイケメンに目が無い結婚したいキャラといった、持ち味もわきまえて振舞っているのも素晴らしい。ただ改めて思うのは、彼女たちの好感度の出どころは、女性としての肉体を否定したその精神性に強くあったのだということだ。

 不条理な話だが、女性アスリートが現役時代、「女」を出すと異常に嫌われる。たとえば、潮田玲子や安藤美姫に対する批判が多いのは、アスリートとしての精神より、女性としての肉体を意識した言動や衣装が多いからだろう。その点で丸山や吉田は、世の中が思う「アスリートとしての健全な精神」を体現した女性として好感度を集めていた。汗を流し、歯を食いしばり、結果を出してきたストイックさを買われていた。つまり、女よりも競技を優先する姿勢が人気の出どころだった。それなのに女を前面に出した下着モデルをやってしまったら、好感度は湧いてこない。むしろ「あれ、あなたもあっち側の女性だったの」という裏切られたような気持ちが湧いてくるだろう。

 丸山や吉田にとっては、はっきり言って理不尽な心理である。彼女たちが悪いというより、起用側も好感度の出どころを見誤っていたのかと思う。

 老若男女問わず、どんな体型や容姿の人でも、好きな格好をのびのびできる社会がいちばんだ。しかし、宣伝活動となると話は違う。ブランドのイメージや、届けたいターゲットがどう思うかということに、気をつける必要が出てくる。

 その意味では丸山も吉田も、ネームバリューはあるものの、下着のモデルとして適正だったかは疑問が残る。商品のターゲット女性たちに対してのケアももう少しあっても良かった。脇を手で押さえて写真を撮る女性と同じ下着を、着たいと思う女性がどれほどいるだろうか。そしてブランドだけでなく、丸山や吉田の「勘違いしちゃって」というイメージダウンも少なからずあったとすれば、いったい誰が得をした起用だったのか首をひねる。

 炎上社会を生き抜くための、好感度という薬。確かに効果は強いけれども、使い方を間違えればとんでもない副作用が出ることを今回の騒動は教えてくれたのではないか。タレントも、用法用量を正しく守ってお使いくださいと但し書きが必要になったのかもしれない。

(冨士海ネコ)

2019年7月7日掲載

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