巨人、宇佐見真吾が日ハムへ移籍、“第二の大田”になる予感【柴田勲のセブンアイズ】

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 巨人にいい流れが来た。リーグ戦が再開したが、秋田でのヤクルト戦を連勝。広島が交流戦で大きく負け越したこともあって、1日現在3ゲーム差で首位に立っている。

 秋田の初線では山口俊が安定した投球を見せたし、2戦目は競り勝った。交流戦で打率1割8分3厘と低迷していた坂本勇人が復活への足場を築いた。あとは2日の中日戦に先発するエース・菅野智之がどんなピッチングをするかだ。本格的に復調すれば間違いなく乗って行ける。

 それにしても今年の巨人、優勝するために現場、フロントが一枚岩だ。4年連続V逸は球団ワーストタイ記録で、5年連続だけはなんとしてでも避けたい。

 こんな背景から新外国人、ルビー・デラロサ投手を獲得したと思ったら、吉川光夫投手、宇佐見真吾捕手と日本ハム、右腕・鍵谷陽平投手、左腕・藤岡貴裕投手の2対2の交換トレードだ。

 鍵谷、藤岡の獲得は言うまでもなくブルペン陣の層の厚さを狙ってのもので、抑えの中川皓太へつなぐセットアッパーを期待している。右内転筋の軽い肉離れで離脱中のスコット・マシソンも復帰予定だ。中継ぎ陣の充実へ、できることはなんでもする。この表れだ。

 私、正直なところ、春先は吉川光に期待していた。しかし、ボールに勢いというか力がなかった。かつて好成績を残した古巣に戻って、復活を期して欲しいということだ。

 宇佐見に関しては新天地で化ける可能性がある。元々、バッティングがいい。なによりパワーがある。捕手としての資質も高く評価されていた。ただ、いまの巨人の現状を見ると小林誠司に炭谷銀仁朗がいて、交流戦中は5番で使った大城卓三が控える。大城は一塁を守ったけど、いつでも捕手に戻ることができる。宇佐見、いわば実質的には第4の捕手だった。

 環境が変われば活躍できる選手はいる。特に巨人のような圧迫感のあるチームから解き放されれば伸び伸びできる。16年のオフに日本ハムにトレードで移籍した大田泰示がいい例だ。

 身体能力が高いし、1発の魅力もある。だが、巨人時代の大田、私はなにを考えてプレーしているのか、よく分からなかった。それがパ・リーグの野球に合ったのか、移籍したタイミングもよかったのか。いまではレギュラーとして活躍している。

 今季の日本ハムは清水優心、石川亮、鶴岡慎也の3人が併用されている。みんな右打者だし、左の宇佐見は重宝されると思う。売りの打撃を生かしてのし上がってもらいたい。

 さて坂本だが、どうやらリフレッシュしてリーグ戦再開に臨むことができたようだ。前回、私は坂本の不調を「疲れが原因」と記した。開幕からチームを引っ張り続けてきた責任感もあったのだろう。疲れからくるタイミングのずれが大きかった。

 「29日には14戦ぶりとなる1発を放った。右翼への打球だった。30日、九回のタイムリーも真っすぐを右方向へ打ち返した。軸足に力を残してしっかりと捉えた結果で、タイミングもよかった。だからこそ逆方向への打球になったのだろう。ヘッドが効いていた。狙い球を読んでキッチリと仕留める。坂本本来の打撃が戻ってきた。

 疲れがあると、どうしても自分のスイングができないものだ。それに腰の張りもあった。リーグ戦再開までにコンディションをキチンと整えたことが一番よかったと思う。一度、身につけた技術はそうそう簡単に崩れない。

 2日からは中日、DeNA、阪神との9連戦。球宴前の大きなヤマ場となる。主将・坂本の復調とともに楽しみに追っていきたい。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長、14年から巨人OB会会長を務める。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月2日掲載

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