安倍外交の深謀遠慮 G20“夕食会”の席次から読み取れる「対中包囲網」

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“末席”に見る日韓関係

 最後に韓国に少しだけ触れておこう。安倍総理は日韓首脳会談を見送ったが、これは韓国に対して極めて強いメッセージとなった。ホスト国の首脳は、できるだけ多くの参加国と会談を設定しようとするのが通常だ。日本はアフリカや太平洋の島国とそれぞれ定期的にサミットを開催している(TICADと太平洋・島サミット)が、日本の総理はマラソン会談 ともいわれる短時間の会談を立て続けにこなすことで、大勢の大統領や首相と面会しようとする。そうした配慮を韓国に示さなかったのは、韓国への怒りを最大限に表したといえよう。

 大阪城をバックにした集合写真では文在寅大統領が一列目にいるではないか、それほどに冷遇されていないではないかと思われた読者もおられるかもしれない。だがその背後にあるロジックを知れば、仕方がないと思っていただけるだろう。

 サミットの集合写真の立ち位置には、就任順とは別に、元首優先という暗黙のルールがある。米国、フランス、ロシア、ブラジルといった国々からは、元首でありかつ政治の実権を握る大統領らが参加するのに対して、ドイツ、イタリア、インドといった国々からは、元首として儀礼的な役割を担う大統領ではなく政治の中心たる首相が参加している。日本や英国といった立憲君主国からも後者と同様に首相が出席している。韓国大統領は元首なので、集合写真の際にはどうしても優遇されてしまうということだ。ただ元首の中ではほぼ末席が宛がわれ、ここにも最悪の日韓関係が反映される格好となった。

 たかが席次されど席次。そこには多くの外交的メッセージが隠されている。

村上政俊(むらかみ・まさとし)
1983年大阪市生まれ。東京大学法学部卒。外務省に入り、国際情報統括官組織、在中国、在英国大使館外交官補を経て、12年から14年まで衆議院議員。現在は同志社大学、皇學館大学で講師を務める。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月1日掲載

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