「老後2千万円」という恐ろしい妖怪を退治する、意外なまでにシンプルな方法

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老後をなくせばいい

 年金だけで暮らせるとわかっても、老後への漠然とした不安は消えない――。

 そんな思いを抱く人もいるだろう。

 先の大江氏はこう説く。

「私は“老後が不安なら、老後をなくせばいい”と言っています。働くのをやめた時から老後は始まるので、働き続ければいいのです」

 再雇用制度で定年延長されても、働けるのは65歳までだ。それ以降の再就職について、人材紹介会社(株)CEAFOMの郡山史郎社長が、こう指南する。

「大切なのは『何でもする』という姿勢です。シニアはホワイトカラーの求人が少なく、えり好みをすると仕事が見つかりません。体力に自信があるなら、工事現場や運送会社のドライバーの仕事をするのもいい。職種さえ選ばなければ、仕事はいくらでもあります」

 実際、シニア向けの求人サイトを見ると、ビル管理や警備などの職種で、65歳以上歓迎、月給20万円以上の求人も少なくない。これだけ稼げれば、年金の受給を70歳まで繰り下げ、受給額42%増の恩恵を受けることもできそうだ。

 一方で、年金を貰いながら、余裕を持って楽しく働きたいと考えるシニアもいるだろう。

 前出の大江氏によれば、

「定年後、京都好きが嵩じて、『京都検定』をとってガイドで収入を得ている人がいます。趣味を仕事にするのもいいですね」

 たとえ無趣味であっても、気落ちすることはない。各自治体が運営するシルバー人材センターに登録すれば、無理なく働ける仕事を紹介してもらえる。

夫婦で8万円

 需要の多い清掃を例に、

「早朝から3時間、マンションのゴミ出しと掃除を時給千円で週4日行い、月4万8千円の収入を得ることができます」

 と語るのは、中野区シルバー人材センターの担当者だ。70代、80代でもそうした働き方が可能だという。

「70代どころか、80代の方も働かれていますよ。平均は75歳。植木の手入れや草取り、自転車置き場整理、家事援助等、様々な仕事があります。植木なら、80歳の方が行っても怪我をしないような依頼か判断してからご紹介するなど、安全第一に考えています。高齢者も人手不足ですから、依頼があっても人が足りずお受けできないことも。会員の方は、平均で4万円ほどの収入を得ています」

 大江氏も、こう太鼓判を押す。

「1人4万円、夫婦で8万円稼げれば、余裕のある生活が送れます。生活のダウンサイジングが出来ているなら、貯蓄も可能です」

 かくも理想的なセカンドライフを過ごすために、必要不可欠なものがある。

 週5日、電車通勤をする84歳の郡山社長曰く、

「長く働くためには健康であることが必須です。私自身、バランスのとれた食事、早寝早起き、人間ドック、1駅歩くなど、健康にはかなり気をつけていますね」

 健康を維持し、可能な限り働き続け、身の丈に合った生活を送る。不安を煽る「老後2千万円」という恐ろしい妖怪を退治する方法は、意外なまでにシンプルなものだった。

週刊新潮 2019年6月27日号掲載

特集「徘徊する『老後2千万円』という妖怪の退治法」より

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