G20直前、金正恩がもらって小躍りした「トランプ親書」の中身は?

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「非核化」の引き換えに「中立化」

「目と鼻の先から米軍基地がなくなる」と米韓同盟消滅に手を打って喜ぶのは北朝鮮だけではない。中国やロシアも同様だ。

 6月19日、習近平国家主席は訪朝に先立ち、北朝鮮の労働新聞に寄稿した。極めて興味深いくだりがあちこちに登場する。「我が民族同士」(朝鮮語版)の記事を翻訳する。

・中国側は朝鮮の同志と共に手を取り合って努力し、地域の恒久的な安定を実現するため、偉大な計画を一緒に作成する用意があります。
・私と金正恩同志の指導と共同の努力により、70年間の輝く道のりを歩んできた中朝関係は新たな歴史的な出発点に立っており、新しい生気と活力をほとばしらせています。
・意思疎通と対話、調整と協調の強化により、地域の平和と安定のための新しい局面を拓いていくことでしょう。

「恒久的な安定のための偉大な計画」「新たな歴史的出発点」「安定と平和のための新しい局面」。いずれも北東アジアの構造的な変化を予告する言葉だ。

「北朝鮮が非核化に応じないのは、その後の核の傘の保証がないからだ」と中国とロシアは指摘してきた。図表「朝鮮半島は誰の核の傘に入るのか」で言えば、「シナリオIV」を避けるには「I」「II」「III」しかない。

 トランプ親書は「III」つまり米韓同盟と、形式的には残る中朝同盟を同時に廃棄して半島全体を中立化しようと呼び掛けたように見える。

「韓国は中国の一部だった」

 原案は中国から出たのかもしれない。2017年4月の米中首脳会談に際して、中国が米国に「韓国主導の統一・中立化と半島の非核化」を提案したとハーバート大学のアリソン(Graham Allison)教授がNYTに書いた。

Thinking the Unthinkable With North Korea」(2017年5月30日)である。「金正恩体制の除去」を前提にした点は異なるが、「Ⅲ」と「半島全体の中立化」で共通している。

 トランプ大統領もその首脳会談で「習近平主席から『韓国は歴史的に中国の一部だった』と説明された」と米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに明かしている。

WSJ Trump Interview Excerpts: China, North Korea, Ex-Im Bank, Obamacare, Bannon, More」(2017年4月12日)だ。韓国を含め朝鮮半島は伝統的に中国の勢力圏であったことを指摘し、暗にそれを認めたのだ。

 米朝が水面下で模索する「中立化・非核化構想」に関しては『米韓同盟消滅』第1章「離婚する米韓」が詳しく触れている。

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