コパアメリカでスポーツ紙は「久保建英」を絶賛、過大評価で無責任と言われる理由

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スポーツ紙の記事は過大評価

 コパアメリカのチリ戦に戻ろう。久保は前半11分に大型MFプルガルの股抜きと、後半20分に中山雄太とのワンツーからドリブルで2人を置き去りにして放ったシュートくらいしか見せ場はなかった。

 久保の優れている点はシュートミスについて「言い訳をすれば、ボールが緩くて少しずれてしまった」と振り返ったように、成功しても失敗してもその原因をしっかりと自覚し、言葉にできることだ。それは15歳でJ3リーグにデビューしたときからかわらない。

 ドリブルにしても、自ら言葉にしたように「リミッターが外れるじゃないですけど、ああやって何も考えずにスルスルと抜ける時がある」シーンは、私たちが何度も目撃してきたところだ。

 久保に対する期待値を考えれば、チリ戦の彼は「物足りなかった」というのが正直な評価だろう。パサーである柴崎岳と一緒にプレーしたのはエルサルバドル戦の後半10分間だけ。他のメンバーとも初めてプレーしただけに、久保が望むタイミングでパスが出てこなかったことも輝けなかった理由の1つに違いない。

 もう1つ気になったのは久保のポジションだ。エルサルバドル戦で森保監督は3-4-3でスタートし、後半22分に室屋成と山中亮輔を投入して4-2-3-1に変更。そして後半22分に南野拓実に代え久保を投入し、トップ下に起用した。

 しかし久保は右サイドに流れてプレーすることが多く、このため堂安と重なり、堂安は窮屈そうにプレーしている印象を受けた。

 久保は2列目もしくは2トップでもプレーでき、チリ戦の後半20分のプレーのように、FC東京でも大分戦では左サイドからタテへの突破でゴールを決めた。しかし本来は右サイドを得意としている。右サイドならカットインしながらのフィニッシュや、ラストパスが出せるし、タテに抜け出してのシュートやクロスとプレーが多彩だ。

 森保監督は、A代表でも五輪代表でも、右サイドMFのファーストチョイスは堂安(コパアメリカは不参加)で、左MFは中島翔哉(24)であり五輪チームでは安部裕葵(20)のため、必然的に久保はトップ下での起用になったのかもしれない。

 いずれにせよ、日刊スポーツやスポニチの1面は、やはり過大評価と言わざるを得ない。久保は自分が持つ実力を発揮できなかった。彼が類いまれな才能を持っているからこそ、厳しい目で報道するべきではなかっただろうか。

 久保は2戦目のウルグアイ戦でベンチスタートとなった。それでも後半38分に三好康児(22)に代わって得意とする右MFで起用されたが、日本はウルグアイの攻勢に守勢一方で、久保もこれといった見せ場を作れずにタイムアップの笛を聞いた。

 さすがに報道の姿勢はチリ戦に比べると冷静だったが、それでも久保について言及した記事は多かった。例えば日刊スポーツで「ちゃんとサッカーしなさい」の連載を持つセルジオ越後氏(73)は21日(電子版)「三好2発で久保は次戦で真価問われる」との記事を掲載した。

《終盤に投入された久保はチームが防戦一方の中で、なかなかボールに触れられなかった。次戦は先発すると思われ、勝たねばならない試合で真価が問われる》

 次戦のエクアドル戦は日本時間の25日。過去の対戦成績は日本の2勝だが、いずれも親善試合のため参考にはならないだろう。

 久保のフル出場を予想する声は少なくない。日本が決勝トーナメントに進出するためにはエクアドル戦の勝利が前提条件になることだけは確かだ。久保にとっても重要な1戦になるのは間違いないだろう。

週刊新潮WEB取材班

2019年6月23日掲載

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