日本が生き残るための秘策、それは女性活用(石田純一)

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石田純一の「これだけ言わせて!」 第34回

 当たり前すぎる事実だけど、人口の半分は女性である。なのに、日本の大企業の雇用状況を見ると、女性社員は全体の25%にすぎず、課長以上になると1ケタで、部長以上ではわずか3%だという。企業だけではない。小学校の教室では、むしろ女子児童のほうが多いのに、女性の校長先生は全体の5分の1ほどだ。国立大学を見ても、女性が学長や総長を務めるのは86大学のうち4大学だけだ。女性のキャリアが、子供を産んだりして中断されがちなのはわかるが、それにしても女性が活躍する場が限られすぎている。

 政治の世界でも、日本における女性の国会議員比率は世界193カ国中165位という、恐るべき低さだ。先ごろ、曲がりなりにも「政治分野における男女共同参画推進法」、別名「日本版パリテ法」が成立した。パリテとは同等とか同一という意味のフランス語で、法律もフランスに由来するが、ただ、オリジナルにくらべると道のりは遠いと言うしかない。

 フランスで2000年6月に成立したパリテ法では、「比例候補者名簿の記載順は男女交互にする」「政党からの候補者を男女同数にする」などと定められ、違反すると候補者名簿は受理されないし、候補者の届け出もできない。一方、日本版は努力を求めるだけで、罰則もないのだ。これでは効果は限定的だと言うほかない。

 仕方ない面もある。現在、衆議院で見ると、自民党の女性議員は281人中22人。7.8%にすぎない。一部の野党のほうが女性議員は多いが、それでも立憲民主党が22.1%、共産党が25%だから、そこにフランスと同じパリテ法を導入すれば、現役の男性議員を大量に追い出すしかなくなる。さすがに、そんな乱暴なことはできない。とはいえ、安倍政権は「すべての女性が輝く社会づくり」を掲げているのだから、この問題、もう少し前向きに進めてほしいものだ。先般の統一地方選では女性議員が躍進したので、今度の参院選は少し見ものではないかと思っている。

 もっとも、アメリカでも女性に開かれていない場所は案外多い。ゴルフのマスターズ・トーナメントが行われるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブも、以前は女性の会員がゼロだった。ところが、マスターズの重要なスポンサーであるIBMのCEOに女性が就任したのを機に、女性がプレーできないことが問題視され、元米国務長官のコンドリーザ・ライス女史らが初の女性会員になったのだ。

 さて、ここで考えてほしいのは、これから日本の労働力は減っていくということだ。しかし、日本経済が今後も成長していくためには、労働力が絶対に要る。女性にもっともっと活躍してもらうしかないのだ。

 働く人にお金がどれだけ還元されているかを示す労働分配率が、2017年度に、43年ぶりの低水準になった。企業が内部留保を増やす一方、賃金を抑えている証拠で、こうしているかぎり、経済は確実に縮小に向かう。いま、日本には350万の会社があるそうだ。しかし、現在、15歳から65歳の生産者人口は7千万人いるけれど、2040年には4500万人にまで減ってしまうとか。すると、大半の会社は人材を集められず、経営が行き詰まってしまう。

 こんな先細りだけは避けたい。そのためには労働力を確保することだ。幸い、日本の労働力の質は世界4位、先進国のなかでは断トツだという。そして、質的に高い労働力には、最低賃金を上げることで応えたいではないか。必死に働いても食べるのがやっと、という状況では、子供を産むどころではなく、労働力はさらに減ってしまう。加えて、優秀な女性を労働力として迎えよう。最低賃金が上がれば男女格差が縮まり、積極的に働きたい女性が増えるはずだ。

 そうなのだ。女性の活用は、実は日本の生き残りに欠かせない事柄なのである。

石田純一(いしだ・じゅんいち)
1954年生まれ。東京都出身。ドラマ・バラエティを中心に幅広く活動中。妻でプロゴルファーの東尾理子さんとの間には、12年に誕生した理汰郎くんと2人の女児がいる。元プロ野球選手の東尾修さんは義父にあたる。

2019年6月23日掲載

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