「ワイン飲みはボケない」という研究結果の気になる中身

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 一本のワインボトルの中には、全ての書物にある以上の哲学が存在している――とは、パスツールの名言だが、おまけにワインには認知症になりにくい効果もあるというのである。

 大阪大学大学院医学系研究科の樺山舞助教(地域看護学)らが、そんな“嬉しい”研究結果を明らかにしたのは6月6日のこと。

 その樺山助教が言う。

「この研究は2010年から始まった『SONIC』(健康長寿研究)というプロジェクトの一環なのです。大阪大学と東京都健康長寿医療センター研究所との共同で行っているものですが、参加する研究者も医学だけでなく、看護学、歯学、心理学、社会学など幅広い分野にわたっている。具体的には、どんな生活をしていると健康で長生きするのか聞き取り調査を続け、集めたデータから、長寿につながる原因を解き明かそうというものです」

 対象者は、関東と関西に住む3千人以上のお年寄り。それを70歳、80歳、90歳に分けて、追跡調査してゆくというものだ。調べるのは、健康状態から、日常的な運動や趣味、食事など多岐にわたり、1回の聞き取りや検査に約3時間。それを3年ごとに追いかけるというから、いかに大がかりなものか分かるだろう。

 で、ワインである。

「調査の一つにお酒を飲んでいる人とそうでない人。また、お酒の種類でどのくらい認知機能に差が出るか調べてみたのです。調査は私と大学院の研究生で行いました。そのために東京へは20回以上通ったでしょうか」(同)

 認知機能を評価するのに「MoCA―J」という方法がある。記憶力や注意力、復唱力などを測るのだが、点数が高いほど認知機能が高い。樺山助教らは1217人を対象に調べたところ、ワインを飲まない人たちのグループが「23点」、飲むグループが「25点」という有意な差が出た。

「しかも、70代でも80代でも、飲まない人たちより認知機能が高かった。一方で、ビールや日本酒などワイン以外を飲む人たちは、飲まない人と差が出ませんでした」(同)

 それなら、明日からチューハイをやめてワインにしようというのは早とちり。

「ワインを嗜むお年寄りの層が、知識欲の旺盛な人たちや健康に気をつかうタイプである可能性もある。いずれにせよ、分析はこれからです」(同)

 もちろん、「飲み過ぎはだめ」としっかり釘を刺すこともお忘れではなかった。

週刊新潮 2019年6月20日号掲載

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