「老後2千万円不足」問題が呼び覚ます安倍政権のトラウマ

政治 週刊新潮 2019年6月20日号掲載

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 金融庁が今月3日に取りまとめた一通の報告書が、政府与党を揺るがせた。老後資金に2千万円が不足する、という例の内容がである。これに「公的年金制度が破綻するのか」と批判の火の手が上がったのだ。

 政府にとってはまったく想定外の展開だった。

「そもそも報告書は、あくまで高齢世帯に投資を促すのが狙いでした。高齢夫婦の平均貯蓄額は2千万円を優に上回り、その眠れる資産を市場に回してくれと訴えようとしたものが、まさか年金破綻の尻拭いを押し付けるものと疑われるなんて……」(政府関係者)

 騒動は1週間経っても収まらず、国会は大荒れに。

「思い返せば12年前、第1次安倍政権がつまずいたキッカケの一つが“消えた年金”問題でした。総理は年金というワードに何より神経質になる。連日、この件がテレビでも大きく取り上げられ、10日の参院決算委で野党の追及を受けた総理の苛立ちように、周囲はハラハラしどおしでした」

 与党は事態収拾に動いた。

「同じ10日、二階幹事長は体調を崩し、きたる群馬県知事選の公認証書伝達式や、自派議員の政治資金パーティーを欠席。本来は翌11日も大事をとって休養する予定だったのが、病身に鞭打って記者を集め、金融庁への抗議声明を発表したのです」(政治部記者)

 さらに、

「政調会長の岸田さんや公明党の山口代表も相次いで金融庁を批判。いつもは身内に甘い麻生金融担当相も、金融庁が提出した報告書の受取りを拒否し、やむなく歩調を合わせた」

 自民党関係者は嘆息する。

「確かに油断がありました。参院選に向けた独自の情勢調査は自民党の数字がよく、これならダブル選の必要はないと安倍さんは判断した。国会も延長せず閉じられるとなって、気が緩んでいたんですね」

 会期末は目前だが、余波は続く。総理も疼く古傷に悩まされそうだ。