ノーベル賞本庶佑博士「小野薬品」への訴訟も視野に、特許使用料は「若手の研究費に」

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訴訟も選択肢に

〈本庶氏が求めている金額は小野の提示したものとは桁違いだ。その根拠を京都大学の関係者が説明する。

「小野薬品単体によるオプジーボの売上げは約900億円(17年度)。しかし、BMSとメルクからのロイヤリティを合わせると、累計収入で4千億円にのぼる。もし前述した小野からの提示条件(2%・10%・40%)で計算すれば18年の1年だけで100億円が本庶氏に支払われることになる。加えて24年に、がん免疫治療薬の市場は4・5兆円(17年の4倍)にまで拡大するとの試算がありますから、小野からの提示条件で計算しても特許期間満了までの合計金額は3千億円以上になる。国際標準料率で計算すれば6千億円以上が「普通」です。金額を見るのではなく、オプジーボの市場価値と国際標準料率に注目してください」

 本庶氏は協議終了までロイヤリティを受け取らないと小野に伝えているため、小野はこれまで約26億円を法務局に供託し、本庶氏は受け取っていない。〉

 正直言って、大学の関係者にも何で僕が頑張っているのか理解していない人もいるでしょう。

 オプジーボは、ほとんどの研究が京大の中で行われ、国の研究費が注ぎ込まれてきました。その成果は、大学の研究環境が生み出したのであって、小野薬品という会社の施設や研究環境を使って発明したものではない。小野の内部における職務発明ではない。製薬会社に分かってもらいたいのは、自社で莫大な投資コストをかけて開発したのではなく、京大の研究者が発見し、開発してきた薬なのだから、大学を対等なパートナーとして扱い、売上げから国際標準となる料率の対価を払ってほしいということ。そして、オプジーボのライセンス料で得た資金は次の若い研究者を育てるために使いたい。だから、300億円ぐらいでは足りないんです。

 実は、もし基金を作ることが出来た場合のことも考えてある。京大とはすでに話をしているんですが、プロのファンドマネージャーを雇って基金を運用させる。仮に3千億円として2~3%の利回りを出せたら、数十人の若い生命科学者を選び給与と研究費を5~10年付けてあげられるのです。オプジーボの成功は何十年に1回出るかどうかのケースです。ここで、学術界が企業から正当な報酬を受け取れる関係を作れないと、後悔することになる。だから、8年も我慢してきたし、簡単には譲れない。

 私は話し合いで解決したいと思っていましたが、最近は、最低でも小野から提示された条件の履行を求めて訴訟を提起すべきだと勧められることが増えています。

週刊新潮 2019年6月13日号掲載

特集「独占激白! 『毎晩ロマネ・コンティを飲みたいわけじゃない』『金の亡者』といわれた『本庶佑』博士が『小野薬品』に反論2時間」より

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