川崎20人殺傷事件、ひきこもりの専門家は「伯母の手紙」が引き金と分析

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伯母からの一通の手紙

 報道によれば、高齢となった伯父夫婦は、訪問看護の必要から市に、隆一容疑者と接触がないので看護師を自宅に入れても大丈夫かと17年以降十数回にわたって相談していた。そして今年の1月、市の担当者の勧めで、伯母がひきこもりを心配する内容の手紙を岩崎容疑者の部屋の前に置いたところ、岩崎容疑者は口頭で伯母に、「自分は洗濯もするし食事も作れるから閉じこもっているわけではなくちゃんと生活している。ひきこもりとはなんだ」と答えたという。

「市の担当者が勧めた、ひきこもった人に手紙を渡すのはマニュアルのひとつとなっていますが、これはまずかった。ひきこもりと言われて、自分のことを全否定するメッセージと伝わってしまいますよ。本人には、ひきこもりと言うべきではありません。ひきこもりと言われたことをきっかけに暴力的になるケースが少なくありません。ずっと接触がなかったわけですから、まず、“おはよう”とか声を掛けて、“美味しいものを作ったから、一緒に食べよう”などと誘ってみるしかありません。少しでも人間関係を築いてから、問題の解決に乗り出すべきでした。自分の存在が否定され、これまでの生活が続けられないと絶望し、死を覚悟したのかもしれません」(同)

 実際、岩崎容疑者は、手紙をもらった翌2月に、町田市の量販店で2本の包丁を購入したとみられている。では、カリタス学園の生徒を狙ったのは何故か?

「本来なら、凶器は伯父、伯母へ向けられてもおかしくありませんが、彼は屈折したところがある。彼の部屋には過去の大量殺人が掲載された雑誌があったそうですが、絶望して死ぬことを想像した。夢想の中で、大量殺人を犯すこともあります。幼い児童を殺傷したのは、伯父夫婦をどん底に陥れようとしたのではないか」(同)

 内閣府は今年3月に、40~64歳のひきこもりの数が推計61万3000人に達していると発表した。1980~90年代に若者だった“ひきこもり”が、30年後の現在、中高年になってしまった形だが、早急に対応策をとるべきだろう。

週刊新潮WEB取材班

2019年6月3日掲載

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