広島に一矢報いた巨人、阿部慎之助をもっと使ったらどうか【柴田勲のセブンアイズ】

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 巨人にとっては大きな1勝だった。24日からの広島3連戦、連敗で迎えた26日に一矢を報い、同カードの連敗を5で止めた。広島の連勝も11で止まった。負けていたら、広島が本格的な独走態勢に入るところだった。

 ゲーム差は2、これが3、4ゲーム差になったら苦しい。いまはなんとしてでも1、2ゲーム差で食らいついていく必要がある。

 原辰徳監督も工夫を重ねている。1番・右翼に今季初めて亀井善行、そして5番・一塁で大城卓三を起用した。これが当たった。一回に亀井が安打で出塁しチャンスを築くきっかけとなり、岡本和真の12試合ぶりの一発を呼び込んだ。

 どんな打線を組んだら相手が嫌がるか。これを考えてのオーダーだったろうが、岡本を三塁に入れて、大城を一塁で起用するなら阿部慎之助を使う手もあったのではないか。相手が嫌がるという点では阿部の方がずっと上だろう。

 足なのか、それとも腰なのか。状態があまりよくないという話を聞くが、ならば2、3打席くらい立たせて交代してもいい。阿部はチームリーダーでもあり、通算400号本塁打まであと「1」と迫っている。代打での出番も減っているが、スタメンで使えば結果を出すと思う。

 先発の山口俊には完投して欲しかったし、せめて七回までは投げさせて、八回を澤村拓一、九回を中川皓太が締める。こう見ていた。だが、チーム事情もあるのか。七回から継投に入ってサムエル・アダメス、戸根千明、田原誠次が崩れて同点に追いつかれた。

 勢いは広島にあった。それだけにイヤな流れを断ち切り、八回に岡本の安打から1点を勝ち越して競り勝ったのは再三言うけど価値があった。

 これで対広島は4勝6敗1分。振り返ってみれば、4月17日に熊本・藤崎台での一戦がターニングポイントになった。ここまで3勝1敗と勝ち越していたが、2点リードの九回にライアン・クックが登板して逆転負けを喫した。これで広島は息を吹き返した。(注)巨人にとっては尾を引く負け方だった。

 この3連戦。緒戦ではけん制死、バッテリー間のサインミス、さらにテイラー・ヤングマンの暴投があった。2戦目は先発したクリストファー・メルセデスが早々に降板すれば、中継ぎ陣が小刻みに失点を重ねた。

 広島相手だと焦る、苦手意識が再び芽生えたのか。広島が優位に立って試合を進めている。

 いまの巨人、その広島はもちろん、楽に勝てる相手はいない。今後も苦しい戦いを強いられていくだろう。

 投手陣では腰痛からファームで調整中の菅野智之待ちだが、岡本が復調のきっかけをつかんだと期待したい。打率は2割5分前後ながら、やはり26日の一発のようにゲームの状況・雰囲気をガラリと変える力がある。

 元々、バットが下から出るタイプだ。速球には大振りになって詰まる。外寄りの球にはどうしても泳ぐ。岡本はタイミングを取ってフルスイングするのが持ち味だ。

 26日の試合前、岡本には「打撃練習ではライナーを打つように心がけて、試合になったらそれを忘れて打席に立てばいい」と話した。だからというワケではないが、主砲の働きをしてくれたのはよかったと思う。打線はおそらく当座はこのまま、1番・亀井、2番・坂本勇人、3番・丸佳浩、4番・岡本でいくのだろう。

 それにしても腰痛は厄介だ。吉川尚輝も復帰する様子が見えない。打者ならそれにヒザか。投手なら肩。私も現役時代は“調子が重い”なんてこともあったが、ごまかし、だましながらプレーを続けた。当時は王(貞治)さん、長嶋(茂雄)さんであれ、だれでもごまかしながら治してきた。

 現在は巨人だけではなく、どの球団も徹底的に治す方針になっている。選手寿命を考えてのことで、いいことだと思う。菅野にしても3、4カ月も休むワケではない。リフレッシュの意味合いもあるのだろう。復帰したら、また投手陣を引っ張って欲しい。

(注)4月16日時点で4勝12敗で借金は8。17日以降は5月25日の巨人戦まで24勝6敗1分。31試合で貯金を2ケタとした。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長、14年から巨人OB会会長を務める。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月28日掲載

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