トランプ大統領に宮中晩餐会で提供される肉は「羊」、焼き方もソースも異例中の異例?

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ジンギスカンも自慢の料理

 改めて表を見ると、登場するVIPは8人。当時の肩書で表記すると、羊がメインでなかったのはチャールズ皇太子(70)・ダイアナ妃(1961〜1997)と、盧泰愚大統領(86)の3人だけだ。

 当時の新聞記事は、なぜ3人に羊が提供されなかったのか触れている。チャールズ皇太子とダイアナ妃は間接的、盧泰愚大統領は直接的な説明だ。ご紹介しよう。

《メニューは、宮内庁大膳課があらかじめ英国側から資料を取り寄せ、ご夫妻(註:チャールズ皇太子とダイアナ妃)が好まれる、さっぱりした構成となった。スープに浮かせたシューの中にはエダム・チーズが詰められ、伊勢エビは千葉県外房産。トリは御料牧場産。サラダにはトマト、パパイア、レタス、セロリ、チコレ……と、それぞれえり抜きの材料が使われた》(86年5月14日:朝日新聞「“ダイアナ週間”フィナーレの宴 最後まで笑み絶やさず」)

 新聞や雑誌のデータベース「G-Search」では検索できなかったが、ネット上では1975年にエリザベス女王とフィリップ殿下が来日された際、メインは「羊のもも肉のロースト」だったとする記事がある。出典が不明なのが残念だが、事実だとすると親子でメインの希望が違ったことになり、なかなか面白い。

 次は盧泰愚大統領だ。こちらも朝日新聞が1990年5月25日に掲載した「歴史踏まえ、未来見つめ 盧・韓国大統領迎えて宮中晩さん会」を引用させていただく。

《宮内庁は、フランス料理のメニューにも気を配り、通常は羊肉を使うメーンディッシュを大統領が好きな牛肉にした》

 基本は羊だが、もてなす側の希望も考慮しながら、柔軟にメニューを組み立てている舞台裏が浮き彫りになる。

 天皇家が大切にする羊の味、それはどんなものなのか。朝日新聞デジタルのオリジナル記事だが、2014年4月の「(皇室トリビア)国賓来たる、最上級の『オモテナシ』」から該当部分をお読みいただこう。

《羊肉は欧州では最上級とされているため、国賓のもてなしに選ばれるのだそうです。蒸し焼きは、スライスされたローストビーフのような見た目で、味わった人によると、柔らかく美味だったそうです》

 外交の舞台だけでなく、秋の園遊会でもジンギスカンが出されたことがあったようだ。先の「御料牧場の四季」からご覧いただく。

《赤坂御苑であった先月9日の秋の園遊会では、宮内庁大膳課で料理を担当する主厨(しゅちゅう)らが、牧場で育てられたヒツジの肉でジンギスカンを提供した。焼き上がったモモやロースにかけるソースは「昭和天皇の料理番」として知られる、初代主厨長、秋山徳蔵氏が考案したレシピ。しょうゆ、日本酒、リンゴや香辛料など約30種を加え約3年間熟成させたものだ》

 更に天皇家は、普段でも羊肉を召しあがっておられるようだ。毎日新聞の「特集ワイド:ひらめきの料理番が『見た』昭和天皇 質素・倹約・無私 でもカレーにイカ粉たっぷり」(2018年8月3日付)には、昭和天皇のカレーに羊が使われていた記述がある。

《カレーの具材は牛、羊、エビと変えたが、ベースのカレーは同じで、まる2日かけて作った》

 食卓に「マトンカレー」がのぼる一般の家庭は少ないはずだ。御料牧場で肉を育てているため“消費”する必要があるのかもしれないが、やはり極めて美味しいのだろう。

 またタイトルが気になった方もおられるだろうが、この記事の主役は昭和天皇。記事の冒頭にはこうある。《昭和天皇はカレーライスに「イカ粉(こ)」をかけていた。スルメを細かく潰した粉である》。執筆した記者も実際に試してみたそうで、「これが結構いける」と書かれている。

 令和初の国賓は、アメリカのトランプ大統領(72)となった。宮中晩餐会は5月27日の月曜に予定されているという。政治担当デスクが解説する。

「トランプ大統領の大好物は、マクドナルドのハンバーガーとケンタッキーフライドチキン、そして牛肉のステーキと言われています。特にステーキは肉が焦げ、カチコチになるまで焼かせ、それにケチャップをかけます。この大統領のスタイルは、アメリカでも有名らしく、『ケチャップなんて子供っぽい』、『せっかくの牛肉が台無し』、『下賎』と散々なのですが、トランプの支持層には『気取らないところがいい』と歓迎されているそうです」

 ステーキの食べ方でさえトランプは“米国民を分断”してしまうわけだが、宮中晩餐会でも、その好みを変える気はないという。

「米政府からは『羊肉でOK』という意向が伝えられたそうですが、焼き方についてはベリー・ウェルダン、つまり『徹底的に火を通してほしい』という要望が来ており、ケチャップも用意するそうです。宮中晩餐会で供される自慢の羊料理は、食べた方が少ないので正確な実像は分からないのですが、ややレア気味に仕上げ、丹精込めて作られたソースが添えられていると言われています。オーソドックスな食べ方とは、かなり違うことになるかもしれません」(同・政治担当デスク)

週刊新潮WEB取材班

2019年5月27日掲載

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