靖国神社で割腹自殺を遂げた保守団体事務局長の「遺言」

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 東京・九段の靖国神社の境内には公道が横切っている。「中道」と呼ばれるその場所で、こと切れた50代の男性が見つかったのは5月11日の午前2時40分頃のこと。腹には包丁が刺さり、そばに遺書が置かれていた。保守系団体「靖國會」の事務局長・沼山光洋氏だ。

「靖國會は車椅子の参拝客のお手伝いをしたり、境内を掃除したりする組織です。終戦記念日には会の呼び掛けで100人近くが参拝します」(靖国神社の関係者)

 設立は昭和35年。現在は軍事評論家の田母神俊雄氏が総代だ。会のホームページには、〈靖國神社国家護持・国家祭祀〉〈天皇陛下御親拝〉などとある。沼山氏が運営に参加するようになったのは、十数年前からだという。知人で出版社「展転社」代表取締役の荒岩宏奨氏によると、

「沼山さんはもともとバイク屋さんでしたが、廃業して靖國會の仕事に専念するようになったのです。普段からとても紳士的で話し好きな人でした」

 靖國會の活動を続けるために、仕事も夜勤を選び、孤独死した人の遺品整理などもやっていた。靖國會の10日付のツイッターには、上皇陛下の靖国参拝が実現出来なかったことに触れた書き込みがある。が、先の荒岩氏が言う。

「ご遺族から遺書を見せてもらったのですが、“誤解して欲しくないのは、御親拝がかなわなかったことを批判しての死ではない。我々が御親拝の環境を作れなかったことに対するお詫びなのです”といった内容のことが書かれていました」

 沼山氏が亡くなった日は、伝説の特攻隊員の命日だという。人生の幕を下ろすのは、この日と心に決めていたのだろうか。

週刊新潮 2019年5月23日号掲載

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