川栄李奈 令和時代のロールモデルとなるか おバカキャラ返上の賢さと強さ

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わたしバカなので、を売りにしない賢さと強さ

 新時代のロールモデル、と感じた点はもう一つある。彼女が周囲からのキャラづけに縛られなかったことだ。「おバカ」と言われながらも、それを売りにせず女優に転じた川栄。従来はおバカキャラが定着すれば、そのキャラに乗っかり続けるのが人気者への道筋だったはず。木下優樹菜や鈴木奈々しかり、「モノがわからない、一般常識が通じない」ということを武器に、大物司会者からお茶の間まで、出来が悪い子ほど可愛いと重宝されるのが定番だった。

 しかし川栄は違った。AKBメンバーと出演していた「めちゃイケ!」を改めて見たが、「私バカなんで、私のオモシロ回答にツッコんでください!」というような開き直りや前のめり感がない。むしろ、坊主にしたことさえネタにしていた峯岸みなみや、高橋みなみの方がそういうスタンスであった。川栄はおかしな回答をしても、バカといじられても、「え~」と恥ずかしそうに笑うだけ。先輩たちの手前、緊張した初々しさと見るか、バラエティのお約束もわからないおバカさと見るかは意見が分かれるかもしれないけれど。同様に「ダウンタウンDX」に出演した時は、九九が苦手、アナログ時計の時刻が読めないなどの「おバカエピソード」で笑いを誘っていた。でもそこでも堂々としているのである。従来のおバカキャラと違う反応を見せる彼女に、肩透かしを食らったような気になったものだ。

 川栄が一貫して見せていたのは、「私バカなんで」という開き直りよりも、「わかりません」と言える素直さであり賢さだったように思う。それは、「おバカ」と自分で自分を縛るようなキャラに、つぶされることも振り回されることもしたくないというたくましささえうかがえた。

 一般的には賢い人ほど、自分の年齢や容姿、周囲の反応を見て、「自分に求められているキャラはこれ」と察知できる。そしてそのキャラからはみ出ることないように振る舞い、空気を読みすぎて疲れる人は老若男女問わず多い。みんなバカにされないよう生きるのに必死だ。けれどバカと思われようと、「わかりません」と正直に言える方がよほど自由に生きられるのではないか。そんな逆説的な賢さと強さを、川栄は体現していたのかもしれないとすら思うのである。

 襲撃事件での恐怖を思えば、ここまでどれほど頑張ってきたのかと頭が下がる思いさえする。かつての谷亮子の「ママでも金」発言をうっかり思い出してしまったが、新時代の賢さと強さを見せる川栄、ママになっても新しい賢さと強さを見せて欲しいものである。

(冨士海ネコ)

2019年5月22日掲載

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