安倍総理一番のお気に入りだった新元号「天翔」不採用のワケ

社会週刊新潮 2019年5月16日号掲載

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〈新元号の選定にあたり、政府が一時、万葉集などを出典とする「天翔(てんしょう)」を最有力案と位置づけていた〉(5月1日付読売新聞朝刊)

 令和元年初日、読売が満を持して放ったスクープだ。

 ざっと記事の中味を要約すると、今年に入って開かれた協議で、「天翔」が最有力案となった。

 何より、安倍総理の〈一番のお気に入り〉だったが、

〈天翔は葬儀社名などに使われていることがのちに分かり、「新元号としてふさわしくない」として見送った〉

 確かに、政府が新しい元号を選ぶ条件として、すでに地名や商号などで「俗用」されていないことが望ましいとされている。

「『平成』が元号に決まる過程でも、制定に携わる役人が徹底的に調査をして、“俗用はない”としてゴーサインが出たのですが、発表後に岐阜県内の地名として存在することが明らかになった。今みたいにネットで簡単に分かる時代ではなかったですからね」(社会部記者)

 あれから30年。確かに、手元のキーボードで検索してみれば……。わずか数秒で、「天翔」を冠する葬儀社が幾つかヒットしてしまう。

 さっそく、そのうちの1軒に訊いてみたところ、

「『天翔』に決まれば注目されたと思います。そこは残念ですね。それくらいです」

 などと素っ気ないが、同じく「天翔」とつく別の葬儀社の社長はこうも言う。

「(報道は)誠に遺憾ですね。葬儀社に使われているから断念、と名指しされるのは、我々が否定されたような、何か下にみられているような……。どうも差別されたような気持になりました。我々は『天に羽ばたいていく故人様をお見送りしたい』という思いでこの屋号をつけたんです。元号になれば追い風にもなったと思うのに、少し残念ですね」

 世紀の舞台裏を暴いた記事が隙間風となって、葬儀に携わる人々の心に、さざ波を立てているのだ。

特集「『令和元年』10の裏物語」より