「ウミガメの甲羅探し」に一苦労!? 元宮内庁職員が語る皇室儀式の世界

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宮中祭祀の秘儀とは?

 令和の時代は5月1日に幕を開けたが、「即位の礼」はまだ終わりではない。10月22日の「即位礼正殿の儀」、11月に予定される「大嘗祭」を経て、新天皇は名実ともに真の天皇となるのだ。

 なかでも関心を集めるのは「メディアはもちろん、宮内庁職員も立ち会えない」(皇室担当記者)大嘗祭の「秘儀」である。天皇陛下は毎秋の新嘗祭で天照大御神をはじめとする神々に新穀をお供えし、感謝を捧げる。そして、即位後初の新嘗祭を「大嘗祭」と呼ぶ。

「数ある宮中祭祀のなかでも大嘗祭は最大のお祭りです。この祭祀のために大嘗宮が特別に造営されます」

 とは、元宮内庁掌典職掌典補の三木(そうぎ)善明氏。上皇陛下の即位の大礼を支えた三木氏は、とりわけ「斎田点定の儀」に苦労したと明かす。これは大嘗祭でお供えするお米をどの田で作るかを決める「亀卜(きぼく)」という儀式で、用いられるのはアオウミガメ。つまり、加工した亀の甲羅を火にかざし、その割れ方で占うのだ。

「この占いには130センチという大きなアオウミガメの甲羅が必要なのですが、海外からの輸入はワシントン条約で禁じられていた。伝手を頼って探し回り、小笠原で自然死したアオウミガメが見つかったのです」

 大嘗祭には午後6時30分から始まる祭典と、翌日午前0時30分から始まる祭典がある。祭祀が執り行われる御殿の中で、儀式に携わるのは新天皇と2人の采女(うねめ)のみ。

 灯明が微かに照らす暗がりのなかで、厳かに進められる儀式の中身は、

「すべてが明らかにされているわけではありませんが、陛下自らが御告文を読み上げられた後、神々にお供えした神饌と同じものを召し上がります。これは“御直会(おなおらい)の儀”と呼ばれ、食事を共にすることで神々から精神的な力を授かるのです。また、合計4時間近くに及ぶ儀式のほとんどを陛下は正座で過ごされますが、これは神職でも過酷なこと。上皇陛下は新嘗祭が近づくと、普段テレビをご覧になる時も正座されておられたと、聞き及んでいます」

 古(いにしえ)から続く「秘儀」が天皇を天皇たらしめるのだ。

週刊新潮 2019年5月2・9日号掲載

特集「『御代替わり』20の謎」より

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