市原悦子さんを看取った姪が明かす「幻覚症状」と「樹木葬」

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穴を掘ると…

 人を信頼しない、生きることを放棄したような言動が見られたというが、その後、家族の献身的な看護により、市原は徐々に快復。18年3月からは、NHK「日本眠いい昔ばなし」の朗読の収録を自宅でこなすまでになった。

 しかし、“お迎え”は待ってくれなかった。

 同年11月に盲腸で救急搬送された市原は、年末にはいったん退院するも正月2日に微熱を出して病院へ。そこから食事がとれなくなり、5日に再入院。翌6日には呂律も回らない状態に陥った。

 意識があったのは7日までで、ミッキー吉野夫妻が見舞いに来ていた。

「伯母はとても喜び、“聴く人の心臓に突き刺さるような演奏をしてね”と。伯母にとってミッキーさんは大切な存在のようでしたので、あの日会えて、芸術の話ができたのは幸せなことでした」

 市原は翌8日に意識を失い、12日に息を引き取った。

 葬儀は18日。棺には、亡夫の写真2葉が納められ、“死に顔は見せないでね”との遺志により、草花で棺を覆い隠して祭壇とした。

「しばらくして、袖ケ浦のお寺で樹木葬をしました。埋めるための穴を掘ると、すぐ横にまだ伯父の骨が見えるんです。骨を覆った晒(さら)しは土に溶けてしまうんですけど、骨は土に還るまでしばらくかかるんですね。私たち家族は“こんなに真横ならきっと喜ぶね”と笑い合いました」

 最期まで、人々の心をじんわりと温める女優だった。

週刊新潮 2019年5月2・9日号掲載

ワイド特集「御世をまたぐ難題」より

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