「肉汁餃子製作所 ダンダダン酒場」が株式上場、餃子の王将と大阪王将を脅かす日

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練りに練られたメニュー

 ダンダダン酒場の知名度が一気に上昇したのは3月28日、NATTY SWANKYが東証マザーズに上場したからだ。

 ちなみに社名は造語だという。nattyは「粋な」、swankyは「見栄っ張り、気取り屋」という意味だ。そこから「粋でいなせ」という洒落を含んでいる。

 上場を受け、日経MJは4月19日、「ギョーザ酒場『ダンダダン』出店加速 100店舗へ マザーズ上場で資金調達 ブランド高め集客狙う」の記事を掲載した。見出しにあるとおり、記事は出店の加速にも着目した。該当部分を引用させていただく。

《知名度の向上にあわせて、2017年には愛知県にもFC店を出店。今月には福岡県への出店も決めている。20年6月期には99店まで出店を進める考えだ》

 また「商業界ONLINE」も4月30日、連載「フードサービスの新しい形」で、「『ダンダダン酒場』のNATTY SWANKYが株式公開『餃子居酒屋ブーム』の象徴が描く野望」を掲載した。執筆者でフードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏が言う。

「社長の井石裕二さんも、副社長の田中竜也さんも、共に1974年12月生まれの44歳。何と誕生日は1日違いだそうです。ある人気ラーメン店の常連客だった井石さんが、同店の店員だった田中さんと意気投合。2001年にNATTY SWANKYを設立し、ラーメン店とダイニング・バーを開店します。どちらも人気店に成長しましたが、『今後もこれ1本でやっていこう』と確信するだけの手応えを得られなかったようです」

 新しい店舗を模索し続ける中、2人は「日本人は餃子が大好き」という点に着目する。ならばサイドメニューでなく、餃子を看板メニューに掲げて、「餃子をつまみにビールを飲む」ような店を作ろう————。

「手持ち資金は決して潤沢ではなく、背水の陣という意気込みで準備を進めたそうです。2011年1月に1号店の調布店がオープンすると、開店初日から行列ができました。同店は僅か8坪しかなかったのですが、客単価2500円、月商650万円の大繁盛店になります。その後は京王線沿線に集中出店するドミナント戦略を採用し、右肩上がりの成長を遂げていきます」(同・千葉氏)

 表では各社のメニューに記載されている餃子の売値を紹介したが、これを1個あたりの価格にしてみよう。小数点以下を切り捨てると、餃子の王将と大阪王将、そして餃々は40円。ぎょうざの満洲は36円。ところが、ダンダダン酒場は76円と強気の設定になっている。

「ダンダダン酒場のメニュー構成は、実によく計算されています。まず、餃子を焼くところをショーアップして、来店者に臨場感を与えることに成功しています。餃子には原材料費も人件費も投下し、まさに看板メニューに相応しい内容です。ところが他の馬刺しや砂肝のニンニク漬け、山盛りキャベツなどは美味しさを保ちながら、徹底した省力化を実現しています。このようにコストのバランスを取りながら、顧客満足度を高めることに成功しているのです」(同・千葉氏)

 先にダンダダン酒場は個人経営の店と誤解されやすいと紹介したが、その「象徴」と位置づけられるのが店内に描かれる壁画だ。

「高橋美樹さんという画家が、各店舗でオリジナルの絵を描いています。どの店も違った絵で、もちろんシールなどではありません。愛知県や福岡県の店舗も、ご本人を出張させるほど力を入れています。店舗の一つひとつには力強い壁画によって魂が込められているように感じられ、チェーン店のイメージがありません。店舗面積もバラバラで、8坪から50坪までバラエティに富んでいます。これは画一化された店と比べると出店余地がたくさんあるということを意味しています」(同)

 こうした特徴が顧客満足度を上昇させていた側面もあるが、「ダンダダン酒場」がブランドとして認知されることを失速させていたと捉えることもできる。

「そこでNATTY SWANKYは上場を選択しました。『ダンダダン酒場の株が東証マザーズで売買されている』ということがチェーン店としての認知度を高めると判断したわけです。今後は地方出店にも力を入れるそうですから、フランチャイズによって店が増えて知名度が広がっていくことでしょう」(同)

 千葉氏は「やはり日本人は、本当に餃子が好きですね」と総括する。ダンダダン酒場の18年6月期売上高は約29億円。これに対し、餃子の王将は18年3月期の単体で約779億円、大阪王将は連結で281億円という具合だ。

 果たしてダンダダン酒場が今後、餃子の王将と大阪王将という“2大ガリバー”を脅かす存在に成長するのかどうか、要注目というところだろう。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月6日掲載

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