「元号」は日本人の名前にどう影響を与えたか 大正元年生まれの男の子1位は“正一”

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元号命名が減った平成

 1989年1月7日からの平成は、価値観の多様化が進んだためか、元号と直結する命名は激減した。だが、それでも平成元年は「翔平」が男子の7位に。平成初期の男子の名前には「平」がよく使われた。一方、同年の女子は「成美」が4位。元号と名前の関係は続いたのだ。

 ちなみに平成の30年間で最も多く1位を獲得した男子の名前は「大翔」(8回)。空高く飛び立つという意味を持つ「翔」の字は、昭和63(1988)年に男子の名前に使われる字とし初めて首位を獲得した。

「翌年に『平成』に突入すると、『新たな時代のなかで、大きく飛翔して欲しい』という親の願いもあってか、より一層人気が上昇」(明治安田生命調べ)。「翔」は平成の男子の名前を代表する人気の字となった。

 平成の男子の名前で、2番目に1位が多かったのは「翔太」(6回)であり、3番目は「蓮」(5回)。「蓮」という字も平成の男子の名前によく使われた。泥の中から茎を伸ばし、美しい花を咲かせる蓮が、力強さと美しさを思わせることなどが理由らしい。平成は不況期が長く、自然災害も多かったことが背景にあると考えられる。

 女子に目を移すと、平成で最も多く1位になったのは「美咲」(8回)。2番目は「陽菜」(7回)で、3番目は「さくら」と「葵」(ともに4回)だった。

 日本人の価値観を大きく変えたとされる東日本大震災が起きた平成23(2011)年以降は、人と人とのつながりを連想させる「結」を使う名前の人気が、男女ともに高まっている。特に女子によく使われるようになった。戦時下とは違う形だが、やはり命名には時代が表れる。

 そして迎えたばかりの令和。新元号が公表された4月1日以降、たまたま新元号と名前が同じだった「令和」さんたちがワイドショーなどで紹介されたが、さて、これからの命名にはどう影響するのだろう?

 男子の平成30(2018)年の場合、上位100位までで、「令和」の文字が使われているのは4位の「大和」のみ。

「令」も「和」も人気の字とは呼べなかった。

 それが、にわかに人気高となるのか、それともストレートな「令一」が急浮上するのか、あるいは今の時代の命名に元号は影響しないのか……。ちなみに「令一」という名前を持つ著名人には、精神医学の権威である順天堂大学名誉教授・井上令一氏(87)らがいる。

 女子は、今では古めかしい名前と思われているためなのか、戦前は大人気だった「和子」が、平成30年には上位100位にすら入っていない。それが再浮上を遂げるのか、あるいは同50位の「和奏」、同58位「和花」がランクアップをはたすのか。それとも命名において改元を意識する親は少数派になっているのか。

 令和元年の命名の傾向を見れば、国民と元号の間の距離がおのずと浮き彫りになるはず。元号不要論者も肯定論者も着目すべきではないか。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月6日掲載

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