ブラック寸前? 少年野球の現場で悩む父親ライターの正直な報告

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桑田や筒香も少年野球の現状を憂慮

 しかし変革を促す声も野球界にはある。

 PL学園、巨人、パイレーツで活躍した桑田真澄氏は少年野球の指導者と親世代に向けて、『桑田真澄の常識を疑え!』(主婦の友社)を書いている。そこで長時間練習に異議を呈し、練習は1日3時間で充分と断言している。

 おお!

 叱声・罵声については、近鉄バファローズなどでコンディショニングコーチを務めた立花龍司氏が、著書『野球少年のやる気と能力を最大限に引き出す魔法のアドバイス』(竹書房)で言っている。

「子供の将来を考えた時、小学生の時期に優先すべきは『強さ』よりも『楽しさ』です」

 さらに「いい指導者は笑顔が多く、『失敗してもOK』と言う」と、その特徴まで言っている。

 現役では、横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手(2016年セ・リーグ本塁打王、打点王)が、変革の旗を振っている。昨年は著書『空に向かってかっ飛ばせ!』(文藝春秋)を出版し、「勝利至上主義はもうやめよう」と訴えた。記者会見もして持論を述べて話題になった。同書にはこうある。

〈これからの時代は、上からの指示に従うだけでなく、自分の頭で考えて行動できる人材こそが活躍できるようになる。(中略)僕だけでなく、世の中全体にそういう空気が広がっているからこそ、野球界の古い体質が敬遠されてしまっているのではないか、とも思います。〉

 筒香選手は野球界のエリートである。その人が真摯に意見するのである。野球界を下支えしている少年野球が変革の機運に乗ることが、これからの野球界全体を変えるはずだ。

 もちろん先んじている少年野球チームだってある。筆者が少年野球に関わるようになってから注目しているチームがある。春日学園少年野球クラブ(茨城)である。チームのホームページにはこんなことが掲げられている。

 (練習時間) 週末1/4ルール
 コーチングを専門に学ぶ筑波大学院生による指導
 適度な試合数と厳密な球数制限による肩、肘酷使の防止
 罵声指導の禁止

 なるほど。これはとても明快である。コーチングや球数制限、罵声指導の禁止など、どれも現代の親が求めているものをクリアしているんじゃなかろうか。こういうチームが増えれば、子どもたちはもっと野球を楽しめるようになるし、少年野球人口の減少にも歯止めがかかるんじゃないか。

 そんなことを思いながらも、土日が来れば、筆者もそれなりに楽しく校庭に立っている。ブラックか否か、懊悩しながら。そう、いまのところ、終日。

池谷玄(いけたに・げん)
四十路のライター。趣味はプロ即戦力候補が格安で見られる大学野球の観戦。球歴はソフトボールから少年野球、中学野球部、高校の野球部(硬式)まで。最近好きな選手は福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手。

2019年5月4日掲載

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