ソニー会長を1年で退任する平井一夫の打算的な理由

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辞める理由は

 そのやり方は今も語り草である。「キャリア開発室」などという名の部署に3千~4千人が追いやられ、一日中、何もしてはならず、私語も禁止された。自主退職を迫る有名な「追い出し部屋」である。さらに、赤字のパソコン事業(VAIO)も売り払い、祖業のテレビも分社化した。

「選択と集中」と言えば聞こえはいいが、苛烈なリストラの一方で、膨れ上がったのが平井氏の収入だ。

 別のOBによると、

「ソニーでは長らく、社長であっても井深さんが貰っていた報酬を超えてはいけないという不文律がありました。さすがに出井(伸之)さんやストリンガー氏の時代には超えていましたが、そっと増やしてゆくもの。ところが、平井氏が社長就任の年に受け取ったのは約1億5千万円。その後、報酬はどんどん上がり、昨年には27億円に達したというわけです」

 それもあって、OBからは不評だらけの平井氏だが、会長を1年で辞めるのも平井氏なりの計算があるという。

「今年度決算でソニーは約8350億円の純利益を予想していますが、これにはカラクリがある。同社が出資していた『スポティファイ』という音楽ストリーミングサイトの上場益が大きく底上げしているのです。一方で事業別に見れば、AV部門は横ばいで、金融も落ち込んでいる。赤字のスマホ事業が人員を半分に減らすのは報じられたとおり。得意のゲームもグーグルなどが猛追している。言うなれば今が“名経営者”として辞められる時なのです」(経済部記者)

 というわけで、35年いたソニーに別れを告げる平井氏は、今後どうするのか。平井氏を知るジャーナリストの片山修氏が言う。

「もう十分稼いだからすぐにビジネスはしないと思います。平井さんは財界活動が嫌いで趣味は自転車ときている。体型を保つために炭水化物を口にしないので、食事の付き合いもやりたがらない。日本に未練はないのでまずは奥さんがいるアメリカに戻るでしょう」

 日本では恨み節の合唱で、居づらいのだろうなんて声も。

週刊新潮 2019年4月18日号掲載

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