【平成最凶の事件簿3】殺人鬼「松永太」が命じた家族同士の殺し合い

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細分化した遺体を遺棄

 そして、この事件があまりに残忍と言われるのは、証拠隠滅の手段。先の豊田氏の書に詳しいが、細分化した遺体を公園の公衆トイレや〈夜更けにフェリー船上から〉海中に遺棄していた。

〈使った包丁やノコギリは川に捨て、浴室や台所は徹底的に掃除し、(被害者の)着ていた衣類もシュレッダーで刻んで捨てた〉

 すべての証拠隠滅作業が終了したのは、被害者の死から約1カ月後だった。

 この未曾有の残虐事件の結末は意外なものだった。松永、緒方と同居していた、1人目の被害男性の長女(すでに17歳となっていた)が、逃げ出し、祖父母の家に助けを求めたのである。10歳女児を手にかけた7人目の殺人から、3年9カ月も後のことだった。

 福岡県警の家宅捜査は徹底していた。浴室のタイルや配管は言うに及ばず、下水道の汚泥まで採取している。大分・竹田津港からのフェリー航路に沿って海底捜索も行った。が、有力物証は何ひとつとして発見されなかったのである。

 遺体がないのでは、立件は難しい。捜査は難航を極めた。17歳少女の「殺害を手伝わされた」「殺害現場を目撃した」との供述から、3件については辛うじて立件に持ち込めたものの、他の4件は少女の証言すらない。しかし逮捕から半年後、緒方が一転して供述を始めたのであった。松永の呪縛から、解放された瞬間だった。

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