「東大合格者」2019高校別ランキングベスト20 “都立健闘”の背景に石原元知事の大仕掛け

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香川照之もがっかり?

 42人と躍進した西大和学園は、自民党の田野瀬太道代議士の父親、良太郎元代議士が86年に創立した、比較的新しい学校だ。

「当初は京大合格者を増やすのに力を入れ、京大のなかで一番偏差値が低い保健学科に大量の合格者を送り込んでいた時期もある」

 と先のジャーナリスト。近年は京大の難関学部の合格者が多かったが、

「今年は東大が12人増え、逆に、京大は25人も減らしました。今度は東大をめざすというアピールか」

 と、安田氏。同校の進路指導担当はこう答える。

「ここ数年、積極的に東大をめざす生徒が増え、理由の一つは、AI技術が進歩し、今後どんな仕事が残るかわからないという時代感覚があると思う。東大の魅力は、1、2年は教養学部で幅広い分野を学べること。高校生が先々まで見通しを立てるのは難しいので」

 東大シフトは“政治的判断”ではないのだろうか。

 逆に、寂しい結果に終わったのは、明治中期以来の歴史をもつ名門進学校の暁星で、わずか2名だった。

「以前は東大合格者を増やそうと、小学生からフランス語を学ばせていましたが、いまは中学生からです。そもそも、勉強ができる生徒は、医学部をめざす傾向にあります」

 と教頭が話す。ちなみに暁星から東大に進んだのが俳優の香川照之だ。暁星で同期だった香川の友人は、

「僕らの代は、現役で10人くらい東大に合格した記憶があるんですけど」

 と、残念そうな顔を見せたが、香川も同じ心境だろう。ところで、暁星より偏差値が数ポイント低い巣鴨が21人、世田谷学園が15人を合格させている。

「巣鴨から合格した子は塾にも行かず、学校に夜まで残って一生懸命勉強したそうです。先生方が若返って熱心に指導され、アクティブラーニング的な授業も増えている。世田谷学園も同様で、勉強をていねいに見る学校の東大合格者が増えたと思います」

 と、中学受験塾サピックス小学部の教育情報センター本部長、広野雅明氏。これは中堅校に必要な姿勢で、香川サン、ぜひ母校に教えてあげてください。

 広尾学園も、暁星と並び2名。ジャガー横田の長男、大維志くんがめざす様子を日本テレビ「スッキリ」が放送し、番組中で「偏差値71の超難関」と連呼された学校である。金子暁副校長は、

「女子が推薦、男子が一般入試で現役合格し、ともに医進・サイエンスコースの生徒です。このコースでは研究者レベルの活動が行われ、そういう学び方をしていると、受験勉強のモチベーションも高まります」

 と説明する。広野氏は、

「いまの中1や中2は、御三家クラスの学力の子が入学しており、その子たちが受験するときは東大合格者も増えるのでは」

 と話すが、今年の東大入試では、広尾学園に3回挑戦して散った大維志くん同様の涙が流されたようだ。

週刊新潮 2019年3月21日号掲載

特集「『石原慎太郎』が笑い『西川史子』が愁える 『東大合格校』悲喜劇の舞台裏」より

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