「QBハウス」は1200円カットでも売上増!? 値上げで赤字転落「鳥貴族」との違い

ビジネス 企業・業界

  • ブックマーク

Advertisement

今後は「1000円カット」そのものがなくなる!?

 加谷氏は、その先駆けである“QBハウス”のブランドの強さも理由に挙げる。

「老舗ならではの安心感はもちろんあります。まして自分の容姿に関わってくるサービスですから、失敗をおそれ余所へ“浮気”する確率は低いでしょう。あるいは、ブランドという点でいえば、コンビニ業界の『セブン-イレブン』(以下、セブン)の例をみると分かりやすいかもしれません。業界の先行者であるセブンは、同一エリアであっても、良い立地には何店も出店する戦略を取ってきました。良い立地であればお客さんも多く来るわけで、品揃えも常に良くしておく必要がありますよね。結果、セブンは“便利な場所にあって、いつ行ってもお弁当が揃っている”というブランドを築くことができたのです。これと同じことを、1000円カットの先行者であるQBもできているわけです。コンビニより広いエリアの単位で、やはり立地の良さをQBはおさえられています」

 ただし、QBのその後を特に楽観視しているかといえば、そうではないようだ。“立地”でいえば、東京・新宿エリアには4店のQBハウスが店を構えるが、周辺には1000円カットの「AVANTI新宿御苑店」や「理髪一番 新宿店」などなどがある、超激戦区だ。

「そうした密集エリアでは、値上げの影響が出ているかもしれませんね。いちど他の1000円カットに行って満足すれば、1200円のQBに行く理由がなくなりますから。ただ、QBが人件費を理由に値上げしたとなると、余所も1000円を維持するのは難しくなるはずです。QBには、大手ゆえのコストパフォーマンスの高さがある。たとえば新店の看板を発注するにあたっても、一度にすれば安く済むわけですからね。そのQBですら1000円を維持できなかったわけですから、他店も厳しい状況で、いずれは価格に響いてくるはずです。もっとも、長くデフレが続く日本に住んでいると分かりにくいのですが、モノの値段が時代によって変わるのは珍しいことではありません。日本でいうと百円均一のような店は米国にもあって、最初は『ダイム(10セント)ショップ』だった。それが50セントになり、『1ドルショップ』になり、そろそろ1ドルを維持するのも怪しくなっているわけです『○円ぽっきり』は変化して当然といえば当然なのです」

 将来的には“1000円カット”そのものもなくなるから、QBハウスは安泰ということだろうか。だがあまり値上げしすぎると、今度は「バリカン」がライバルになってきそうな……。

週刊新潮WEB取材班

2019年3月19日掲載

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。