宝石バチに“ロボトミー手術”されたゴキブリの切ない末路 【えげつない寄生生物】

えげつない寄生生物2019年3月18日掲載

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 ゴキブリを奴隷のように支配したり、泳げないカマキリを入水自殺させたり、アリの脳を支配し最適な場所に誘って殺したり――、あなたはそんな恐ろしい生物をご存じだろうか。「寄生生物」と呼ばれる一見小さな彼らが、自分より大きな宿主を手玉に取り翻弄し、時には死に至らしめる様は、まさに「えげつない!」。そんな寄生者たちの生存戦略に、昆虫・微生物の研究者である成田聡子氏が迫るシリーズ「えげつない寄生生物」。第2回は「ゴキブリを奴隷化する宝石バチ」の続きです。

ぼーっとするゴキブリ

 他の昆虫やクモ類などを捕らえて巣に持ち帰り、自分の子どもの餌にするハチは「狩りバチ」と呼ばれます。これらのハチは、獲物を持ち帰る際、1発の毒で獲物を仮死状態にして巣に持ち帰ります。つまり、お持ち帰りできる大きさの獲物を狙います。

 しかし、エメラルドゴキブリバチの獲物は自分の体よりも何倍も大きいワモンゴキブリです。仮死状態になってしまったら自分の力では、巣に持ち帰ることができません。そのために、仮死状態にはせず、より複雑な毒を組み合わせて、獲物を自分の足で歩かせるのです。

 では、2回目の毒を脳に注入されたゴキブリのその後を見ていきましょう。ゴキブリは麻酔から覚めると何事もなかったように起き上がります。ほぼ無傷で元気に生きてはいます。しかし、1回目の毒を注入された時と違い、もう暴れたり逃げようとしたりはしません。それは、少し前にもお話しましたように、逃避反射を制御する神経細胞に毒を送り込まれているからです。逃げる気を失ってしまったゴキブリはまるでハチの言いなりの奴隷です。ゴキブリは自分の足で歩くことも出来ますし、普段通りの身づくろいなど自分の身の回りのことをすることも出来ます。ただし動きが明らかに鈍く、自らの意志ではほとんど動きません。このように2回毒を注入されたゴキブリは約72時間、遊泳能力や侵害反射が著しく低下しますが、一方で飛翔能力や反転能力は損なわれていないことが研究により明らかとなっています。

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