働く女の描き方がリアルで好ましい「グッドワイフ」

芸能週刊新潮 2019年3月14日号掲載

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 おじさんにかまけすぎて、女を忘れておりました。いつもならば文句か舌打ちの日曜劇場だが、今期は好物。アメリカの人気ドラマが原作なので、土台が盤石なのは当たり前だが、働く女の描き方がリアルで好ましい。「グッドワイフ」である。

 16年の専業主婦生活を経て、弁護士に復帰した主人公を演じるのは常盤貴子。最近のドラマで常識のある知的ヒロインは久々。異色とか破天荒とか型破りは飽きた。地に足ついた、まともな女がやっと出てきたよ。

 常盤の夫は東京地検特捜部の唐沢寿明。特捜部内の権力争いだけでなく、政治家絡みの案件に踏みこんだせいか、収賄容疑で勾留。おまけに記者(相武紗季)との不倫まで報道される。そのせいで、常盤は息子と娘と生活を守るために、転居&復職した経緯がある。

 観るべき軸は三つ。一つは夫婦間の溝だ。常盤と唐沢の勝ち組インテリ夫婦が、いかに虚ろな関係だったかを描く。真実も思惑も魂胆も隠して家族を不安に陥れた唐沢を、常盤は信用できない。収賄や不倫が問題ではない。手の内を見せずに自分を利用する夫に絶望したのだ。毅然と、あるいは笑顔で対処するも、腸(はらわた)が煮えくり返る日々。その心の揺らぎを静かに映し出す常盤が素晴らしいのよ!

 二つめは、そんな常盤を支える女たちだ。法律事務所のボスである賀来千香子は、利益最優先の守銭奴。歯に衣着せず、甘っちょろいことも言わず、常盤には弁護士としての価値を要求。「夫の醜聞(スキャンダル)で人生を狂わされた女を存分に利用しろ」とも。打算的だが、合理的。これは揺らぐ常盤に、暗に自立を促す優しさでもある。

 また、パラリーガルの水原希子は情報収集能力に長け、法廷で勝つための突破口を提供。SNSの裏&鍵アカウントも特定できる才女だ。常盤の心に土足で踏み込む質問を躊躇なく連発するが、女としての生きざまを再確認させる役割も果たす。上も下も手厳しいが、風通しがいい。女が実力を発揮できる職場と感心する。

 三つめは、ゲストが演じる女の生きざま。3話では常盤が闘う相手で妊婦弁護士の江口のりこ。やり手だが、勝てないとわかった瞬間、即辞退。道義的にも自分は関知しないと去り際も鮮やか! 賢いし、正しい。

 4話では須藤理彩。常盤のママ友だったが、上っ面だけの口先番長。自分が困ったときだけすがってくる調子のよさ。でもそれで生きてきたんだな。常盤が縁を切るシーンに胸がすく。

 同じく胸がすいたのは、唐沢を陥れる検事・吉田鋼太郎の妻を演じた峯村リエ。夫と離婚するために常盤の事務所に来訪。見栄とコンプレックスの塊で悪趣味な夫に、逆三行半(みくだりはん)を叩きつける。しかも常盤にしっかり情報提供。快哉を叫んだね。

 つまり、これは女の多彩な生きざまを描くドラマだ。もちろん、常盤に恋心を抱く小泉孝太郎や、小賢しい北村匠海ら男性弁護士たちも重要かつ必須だが、あくまで香辛料。生活や家族を顧みずに「ロマンとプライドと熱血だけ追求する男ドラマ」に辟易した人が楽しめると思う。つうか楽しい。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。