「カメ止め!」プロデューサーが早大で“出前授業”、学生は映画館に行かないという現実

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CMも見どころ

 ヒットメーカーとしての期待も集まるが、ご本人は「予算1億、2億の映画を作るつもりはありません」と語る。あくまでも「制作費300万円」が基本だ。

「私は大学を卒業してリクルートに就職したのですが、そこで教育関係の方々とお仕事をしたこともあり、『人材育成に携わりたい』という考えから転職し、独立を果たしました。映画がヒットすることはもちろん嬉しいですが、それよりも、ENBUゼミナールを卒業したOBが俳優や監督として活躍してくれることが最大の願いです」(市橋氏)

 キャンパスに映画マニアが珍しくなかった往時を知る者にとって、今の大学生が映画を観ないという現実は驚き以外の何物でもない。だが、それでも市橋氏は「映画の未来」を信じているという。

「『カメ止め!』を、これほど観客の皆さんが愛してくださったのは、劇場で一緒に笑い、一緒に手に汗を握るという体験が、スマホを使って孤独に視聴するのとは全く違う体験だったからだと思います。映画館という場所自体がエンターティメントとして、まだまだ充分に機能するはずです」

 その「カメ止め!」だが、早くもお茶の間に届けられることになる。業界関係者の間では、冒頭に紹介した「CM問題」や、「年末年始に視聴率が伸びなかった『金曜ロードSHOW!』で『カメ止め!』はどこまで視聴率を取るか」などのポイントが大きな注目を集めているようだ。市橋氏は「CMについては私も知りません」と明かす。

「それこそ、日本テレビさんがどこでCMを入れるかを、1つの見どころと考えてくださっても面白いと思います。副音声も、上田慎一郎監督、出演した濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、秋山ゆずきの合計5人による実況生トークが行われますので、これも楽しみにしてほしいです」

 視聴率の問題は、市橋氏にもプレッシャーとなっているようだ。

「日本テレビさんが既に大変な宣伝をしてくださっていてありがたいですし、期待になんとか応えたいという気持ちです。視聴者の皆さんにお願いしたいのは、『どうか2時間、絶対にテレビを観続けてください』ということです。様々な理由から序盤で観るのを止めたいと思う方もおられるかもしれません。しかし、本当に面白くなるのは後半からです。前半で『ただのゾンビ映画だ』と思わず、どうか観続けてください。つまらないと思っても、我慢して観てください。しばらくすると、絶対に面白くなります」

 一方、「あの日々の話」は東京国際映画祭に正式出品された“質”が自慢だ。ちなみに「カメ止め!」は東京国際映画祭の正式出品作には選ばれていない。

「大学生は映画を観ないという事実はありますが、この映画で大学生が映画館に足を運ぶきっかけになったらいいなと思います。もちろん先に言った通り、年輩の方でも楽しめる作品です。『今の学生も、昔と変わらないんだね』と思ってもらえたら嬉しいですね。また出演している役者さんは、一般の方々には知られていない人が多いでしょう。それも『カメ止め!』と同じです。少しでも出演者と監督に光が当たればと願っています」(市橋氏)

 市橋氏の授業を聞いた、法学部の三島大晴さん(19)は、「やり甲斐のあるお話をいただき、本当に光栄です」と身を引き締める。

「具体的には今後、広告研究会の中で話し合い、プランを提案させていただきます。大学生向けに特化した宣伝用動画などを制作することになるはずですが、私自身はとても面白い映画だと思いました。1人でも多くの大学生が映画館に向かってくれるよう頑張りたいです」

 三島さんに「大学生の映画離れ」の理由について訊いてみると、「あくまでも個人的な意見ですが」と前置きしながら、次のように分析してくれた。

「子供の頃からゲームやYouTubeを自宅でプレーしたり視聴したりしてきたので、わざわざ映画館に出かけて映画を観るという習慣がないのだと思います。映画館で映画を観る大学生は少なくても、ネット配信で映画を観ている学生は意外に多い。このあたりに理由が潜んでいるのではないでしょうか」

 3月に「カメ止め!」が地上波で初放送され、「あの日々の話」は4月に公開。それと並行してシネマプロジェクト第8弾『あいが、そいで、こい』の6月劇場公開の準備が進む。世間の喧騒とは別に、市橋氏の原石を磨く作業は静かに、かつ着実に積み重ねられている。

週刊新潮WEB取材班

2019年3月8日掲載

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