セブン-イレブンの「おにぎり」セールに異変 “1個100円”が“朝2個200円”に不満の声

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キーワードは高齢化

 解説するのは、流通アナリストの渡辺広明氏だ。

「そもそも17年の3月から、セブンは午前の時間帯に力を入れる『朝セブン』を行ってきました。サンドイッチやパンとコーヒーの組み合わせが200円になるキャンペーンです。通常のおにぎり1個100円セールのマンネリもあってから、今回は、朝セブンの対象商品におにぎりを組み入れてみたのでは。そこには、パンとコーヒーでは朝を利用しなかった層も呼び込むことで、『朝はセブンに行く』という習慣を浸透させる狙いもあるはず。“2個”としたのも、1個100円セールでは100円にしかなりかねない1人あたりの単価が、2個200円ならば2個買うわけで、1人あたりの売り上げが上がるわけです。お店にとってもメリットがあります」

 いやいや、1個100円セールの時におにぎりを買うのが1個だけってことはない、2~3個はいけるでしょう――と思ったあなたは、ずばり、若い。今回のセールが“朝”という点ともかかわってくるのが、客の高齢化だ。

「いまの若い人はあまり朝食を食べないとも聞きますから、朝にセールをやられてもという声はわかります。しかし、いまや4人に1人が65歳以上の時代。コンビニは若者ではなく、シニアのための店になってきているのです。そして高齢の方は、朝が早い。2個200円ならば、散歩がてら買いに来て、朝ご飯にご夫婦でひとつずつ食べていいわけです。シニアをターゲットにするならば、朝の時間というのは大事なんですよ。朝セブンは朝4時から始まっていますが、店としても、朝の出勤時間より前の時間帯はお客が少ないという課題がある。そこに集客する意味でも、今回“おにぎり”を朝にお得な価格で売ることにした意義はあると思いますね」

 ターゲットを絞るという点では、ローソンも同じだと渡辺氏はいう。ローソンでは昨年3月、毎週金曜日の16~21時59分に揚げ物や焼き鳥を20%オフにするタイムセールを実施。その後これは拡大され、平日の同時間帯にコロッケなどを2個買うごとに20円引きとなる「夕方得割」が、今年2月4日から3月1日の間で行われていたのだ。

「セブンがシニア層なら、こちらは仕事を持っている有職女性をターゲットにした施策ですね。料理をする余裕のない女性が、仕事帰りに、スーパーではなくて近くのローソンで揚げたてを買って帰る、という形を想定したわけです。ただし、割引の対象に『アジフライ』があるあたり、シニアも視野には入れているでしょうね。若者だったらコロッケや肉でいいわけですから。ローソンのアジフライはなかなかレベルが高いですよ。セブンにしてもローソンにしても、重きを置くところは違いますけれど、ターゲットを明確にしたキャンペーンを行っている点は同じです」

 渡辺氏の試算によると、日本のコンビニで売れるおにぎりは、年およそ60億個だという。国民1人あたりでは、年48個、月4個の計算になる。そんな国民食のコンビニおにぎりが、時世に流され高齢者が優遇されるとなれば、若年層には“いい気分”ではない。最後にセブンに聞くと、

「通常の(1個)100円セールを止めたわけではなく、今回は『朝セブン』としての別の企画です。そもそもおにぎりは複数買いされるお客様が多いので、そうした方へ向けて“2個”とさせていただきました。また“2個”とすることで様々なフレーバー(具)をお試しいただき、リピーターを増やしたいとの思いもあります」

 次回がいつかは未定とのことだが、“1個100円”が廃止というわけではないという。早起きは三文の得。明日の朝は早起きしてみては。

週刊新潮WEB取材班

2019年3月8日掲載

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