「平和のために日本は謝れ」 反日・反米を煽る文在寅「3.1演説」の正しい読み方

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2つの思い込み

 ではなぜ、ほとんどの日本の新聞が「穏健化した」とのトーンで報じたのだろうか。2つの「思い込み」からと思われる。

 今年の演説は、強烈な反日演説になるとの予想が一般的だった。3・1運動100周年の年であるうえ、文在寅政権が対日強硬策を繰り出す真っ最中でもあったからだ。

 しかし、実際の演説は「予想」ほどには激しくはなかったため、多くの韓国人が「昨年の演説と比べて激しい」と感じたというのに、日本の新聞は「反日の度を弱めた」と書いてしまったのだろう。

 もう1つの「思い込み」は、2月27〜28日の第2回・米朝首脳会談が物別れに終わった ことから生まれた。文在寅政権は金正恩(キム・ジョンウン)政権とスクラムを組んで、米国の対北制裁の緩和を狙っていた。

 だが、それが空振りに終わったため、「困惑した文在寅政権は日本との対立緩和に動くだろう」との思い込みが発生した。

 毎日新聞の「文大統領『協力の未来』強調、対日批判避ける 韓国3・1運動100年」は「穏健化」を次のように説明した。

《北朝鮮の非核化や南北協力などが思惑通りには進んでいないこともあり、北朝鮮を巡る国際環境を文氏が目指す方向へと進めるには、日本との連携が必要だと判断した可能性もある。 》

 証拠となる具体的なファクトは、一切、示されていない。というのに、これを追う形で多くのテレビ局が、夕方以降のニュースで「困った文在寅が日本に折れてきた」との視点で報じた。

「韓国のドジ」を楽しむ日本

 日本人は「韓国の失敗」を過大評価するようになった。高まる嫌韓感情からだ。ハノイでの第2回・米朝首脳会談については、「米朝交渉物別れでも、実は“ほくそ笑む”文在寅 韓国が北の核を使って日本を脅かす最悪シナリオ」という記事を「デイリー新潮」(3月1日)で書いた 。

「物別れの結果、北朝鮮の核保有は暗黙裡に認められる可能性が高まった。文在寅政権はこれを奇貨として北の核を背景に日本に強腰に出てくるであろう」との警告である。

 この記事が「Yahoo!ニュース」に転載されると、読者の投稿欄には「こんなことはありえない」「今回の米朝首脳会談で一番の敗者は北朝鮮、次が韓国なのだ」といった趣旨の書き込みが目立った 。「せっかく韓国のドジを楽しんでいる時に、水を差されたくない」という心情を映したのだろう。

 ただ、韓国がドジを踏んだからといって、日本が得するとは限らない。トランプ政権が、非核化前に制裁を緩和するといった安易な妥協をしなかったのは、日本にとって幸いだった。しかし依然として、北朝鮮の非核化も拉致被害者の奪還も、糸口さえ見出せないのが現実である。

 第2回・米朝首脳会談を受け、米政府が運営するVOA(米国の声)は「米上院議員たち『トランプは賢明な決断…シンガポール会談前の最大限の圧迫を復元せよ』」(3月1日:韓国語版) を報じた。

 VOAは「中国、ロシア、韓国が対北朝鮮制裁を緩めようとしている中、ハノイでの米朝首脳会談がそれを加速しかねない」 との懸念が広がっていると指摘。上院外交委員会の民主党トップのロバート・メネンデス議員の「国際社会は北朝鮮への圧迫を(第1回・米朝首脳会談前の水準に)復元すべきだ」との意見を紹介した 。

 というのに、トランプ大統領は制裁を強化しないと明言したうえ、北朝鮮を圧迫してきた毎春恒例の米韓合同の大型演習を2019年から中止してしまったのである 。

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