日本アカデミー賞最優秀助演女優賞受賞の樹木希林さん 「生き様」がブームになる理由

芸能 2019年3月2日掲載

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 日本アカデミー賞受賞式が3月1日に行われ、昨年9月に亡くなった女優の樹木希林さんが最優秀助演女優賞を受賞した。

 数々の名作はもちろん、その自然体な生き方や言葉にも共感や憧れの声が集まっていた樹木希林さん。亡くなった今もなお、多くの人に影響を与えているようだ。

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 もはやブームと呼んでもいい「樹木希林」人気。昨年末刊行の『一切なりゆき』を筆頭に発言集が3冊刊行されたが、どれも軒並み大ヒットしているという。

「読者からの手紙は、圧倒的に50代60代の女性から。生きていくのが楽になりました、という感謝の言葉がほとんどです。現在、発売2カ月で80万部に迫る勢いです」(『一切なりゆき』担当編集者)

 さらに3月には対談集が2冊刊行され、デパートでの写真展も予定されている。

 前出の担当者によると「樹木さんの言葉はどこをどう取ってもそれが見出しになる。簡単なのに深い。“思索者”なんだと思います」。以下、その言葉の一部を紹介しよう。

「求めすぎない。欲なんてきりなくあるんですから」
「嘘やごまかしを言おうとすると、セリフをとちるんです」
「一番トクしたなと思うのは、不器量というか、不細工だったこと」
「『人は死ぬ』と実感できれば、しっかり生きられる」

 生き方、家族、仕事と発言はもともと多岐に亘っていたが、2004年に乳がんが発見されてからは「発言の幅が広がった」(別の編集者)という。

 05年には右乳房を全摘出、13年には「全身がん」であると自ら告白した。当時、「週刊新潮」の取材に対し、樹木はこう答えている。

「生活の質を下げてまで治療するのはどんなものか、と思ってね。食べたいものを食べて、飲みたいものを飲んでという、当たり前の生活を送りたいのよ」

「何か覚悟を決めてるとかそんな素晴らしいものではないの。ただ、欲がないだけ。あたしは欲がないの。いや、まったくというわけじゃなくて、みんなとは欲をかくところが違うのかな」

 自宅のテレビはブラウン管式。靴は長靴を含めて3足。「モノを持たない、買わないという生活は、いいですよ」と、72歳のときに語っている。マネージャーを付けず、仕事は直接引き受けていた。自宅の留守番電話は樹木本人の声で「写真の再利用はどうぞご勝手に」と吹き込まれていて、写真使用料などは請求しなかったという。要は「契約とか、面倒くさい」との理由だったらしい。

毎年同じことができることが幸せ

 樹木の生き方への共鳴は、出版物だけに止まらない。樹木希林さん出演の映画「日日是好日」(原作・森下典子)は公開から4カ月以上たった今でもロングランを続け、観客動員数100万人を突破した。

 20歳よりお茶を習っていた主人公(黒木華さん)が、就職の躓き、失恋、そして肉親の死を経験しながら、一方でお茶の先生(樹木希林さん)につけてもらう稽古を通じ、季節の移ろいをも五感で味わうようになっていくという本作。

〈雨の日は、雨を聴く。雪の日は、雪を見る。夏には、暑さを、冬には、身の切れるような寒さを味わう。……どんな日も、その日を思う存分味わう。お茶とは、そういう「生き方」なのだ。そうやって生きれば、人間はたとえ、まわりが「苦境」と呼ぶような事態に遭遇したとしても、その状況を楽しんでいけるかもしれないのだ〉(『日日是好日』より)

 映画の終盤でお茶の先生が、まるで樹木希林さんご本人の言葉のような台詞を口にしているのが印象的だ。

「こうしてまた初釜がやってきて、毎年毎年、同じことの繰り返しなんですけど、でも、私、最近思うんですよ。こうして毎年、同じことができることが幸せなんだって」

 食べたいものを食べ、飲みたいものを飲み、当たり前の生活を送って天寿を全うした樹木希林さん。その生き方はこれからも多くの人に、希望を与え続けるだろう。

デイリー新潮編集部