「大坂なおみ」も知らないファミリー・ヒストリー 母方のルーツに北方領土

スポーツ週刊新潮 2019年2月21日号掲載

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「大坂なおみ」も知らないファミリー・ヒストリー 曾祖母が自伝に綴ったソ連兵「北方領土」収奪の日(1/2)

「黒」なのに勝手に「白」にされる騒動に見舞われた大坂なおみ(21)。言うまでもなく、彼女の父親はハイチ系であり、母親は日本人。そして母方のルーツを辿ると、日本外交最大の懸案のひとつである北方領土問題に行き着くのだった。意外な大坂家の歴史を繙(ひもと)く。

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 山口瞳は自身のルーツに徹底的にこだわり、シドニィ・シェルダンは身内でかためた企業の裏切りの内幕を題材に、同名の小説をものした。

『血族』

 良くも悪くも人は「血の呪縛」から逃れられず、自らの来し方に思いを馳せる。そして、よその家との彼我の差を気にしてみたりする。

 大坂なおみ。言わずと知れた、日本が誇るスポーツ界最大のスターだ。彼女は一体どんな家系のもとで育(はぐく)まれてきたのか。以下は世界一の女性を生み出した大坂家の、「拳銃」と「妾(めかけ)」の悪夢をくぐり抜けてきた壮絶なファミリー・ヒストリーである――。

「北方領土の日」だった2月7日、東京の国立劇場では北方領土返還要求全国大会が開かれていた。安倍晋三総理も出席した同大会では、ひとつの「異変」が起きていた。それは安倍総理の挨拶の言葉に表れていた。

「領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針のもと、交渉を進めていく」

 昨年まで強調されていた「4島の帰属の問題を解決」という言葉が、慎重に避けられていたのだ。国会答弁でも安倍総理は「我が国固有の領土」「不法占拠」という表現を使わなくなっている。北方領土問題の解決を焦り、プーチン大統領に足元を見られた安倍総理がロシア側に「配慮」しているためだという……。

 ソ連(当時)によって文字通り不法占拠された我が国固有の領土を取り戻すのに、なぜ「配慮」しなければならないのか理不尽さが募る。その上、いわゆる2島“先行”返還論が跋扈(ばっこ)し、4島返還は「高嶺の花」となりつつある。それどころか、結局、プーチンに騙され一島も返ってこないのではないかとの憶測も飛び交う。日本国民の思いはまたしても踏みにじられるのではないか、元島民の切実な思いはいつ結実するのか。

 そんな不安が渦巻く平成最後の年の冬。実はその不安と「大坂家」は無縁ではない。いや、一家は北方領土問題の「当事者」とさえ言えるのだ。

「母の大坂みつよは生前、『勇留(ゆり)島へ帰れたら、こぢんまりとした家を建てて、海を眺めながらゆっくりしたいもんだ』と言っていました」

 こう語る河野(かわの)良子さん(71)は大坂なおみの祖父の妹、つまりなおみの大叔母にあたる。

「4島返還を主張し続けるべきなのか、2島先行返還に切り替えるべきなのか、母が生きていたら意見を聞いてみたかったですね」

 今をときめく大坂なおみの「ルーツ」は北方領土の歯舞群島のひとつである勇留島にあったというのだ。ここで大坂家について、改めて振り返ってみることにする。

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