「矢沢永吉」公演を出禁になった私設応援団会長 知られざる永ちゃんファンの“掟”

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出禁は珍しくない

 当時はロックのコンサートというと、とにかくハメを外すものだという風潮があったのだろう。先の浅野氏の著作には、2000人ほどの会場で観客がイスの上で飛び跳ね、300脚ものイスが破壊されたというエピソードが紹介されている。この他にも暴走したファンの集団が大阪城ホールの噴水を破壊するといった騒ぎがあり、矢沢のコンサートでは会場拒否が相次いだ。

 85年の武道館公演では、観客席でケンカ騒ぎが起き、それを見つけた矢沢が自ら演奏を中断して訴えかける場面もあった。このとき矢沢は、〈夢っていうものと、何でもいいからウケればいい、グシャグシャになればいいというのは別だ〉と話したうえで、コンサートが怖くて行けないというファンレターの声を伝え、〈コンサートっていうのは、本当にハッピーなものじゃなきゃ絶対にいけない〉と訴え、騒ぎを鎮めた。

 今回の出禁通達にもあった〈コンサートに行きたいけど怖くて行けない〉という声は、矢沢にとって長年の課題といえる。今回の出禁騒動を、先のファン氏はどう見ているのだろう?

「当時、私設応援団をやっていた連中も、今はちゃんとルールを守っていて、永ちゃんが嫌がることをあえてしようとは誰も思ってないですよ。昔の私設応援団は、演奏中に旗を振ったり、“永ちゃんコール”をやっていたけど、A氏の団体は会場の外でやっていたわけだからね。いい年して、旗を振り回して……とも思うけど、人に迷惑をかけているとは思わない。でも、イカツイ恰好をした人が集まって旗を振り回してたら、怖いと思う人がいるのもわかりますよ。だから永ちゃんは、止めさせようとしたわけです。ただ、外で集まるのは個人の自由なんだから、出禁にするほどでもないんじゃないかって……。そう思うと、ちょっと可哀想になりますね」

 今回、「出禁」という容赦ない処分が物議をかもすことになったわけだが、A氏を知るある50代のファンによると、珍しいことでもないそうだ。

「出禁というのは、しょっちゅうあることなんです。これまでも、永ちゃんをトイレまで追いかけてサインをねだった追っかけや、非売品をパクったファンが出禁になっていて、だいたい嘆願書を書いて最終的に勘弁してもらうんです。だから、なんで今さらテレビやネットで騒ぎになっているんだろうと思いましたね。出禁になったAさんは、特攻服もカラースーツも着ないですし、演奏中は大人しいくらいです。“永ちゃんコール”にしても、矢沢サイドのSPに“1回だけ”と許してもらったうえで会場の外でやっていたわけだから、出禁にするほどのことでもない。たしかに一般の人が見たら、怖いと思われるかもしれないけど、永ちゃんが好きで応援したいという思いは、みんなピュアなんです」

 また、A氏の私設応援団は、昔の私設応援団とはまったく違うものらしい。

「我々がガキの頃は、中学生の不良グループが私設応援団に入らされたり、上納金みたいなものがあったり、たしかにヤクザの勢力争いみたいなことがあった。けど、今は100パーセントないです。昔の私設応援団を見てきた私からすると、Aさんの団体は私設応援団とも言えない気がします。各地域に少人数でやってる団体があるんですが、Aさんが一緒にやろうと声をかけて、武道館のときに外で旗を振ったり、100人の飲み会を開いたりしている程度。いつも組織だって動いているわけでもない。いわば旧車會(※改造バイク愛好家の集まり)みたいなものなんですよね。あえて言うと、アウトロー系の雑誌に堂々と出て、『俺たちが盛り上げてる』といった表現をしたのが、マズかったんじゃないかな」

 今回ご登場いただいた2人のファンは、ともにファン歴40年以上。矢沢サイドが過去の私設応援団のイメージを嫌い、厳しい措置を取ったことを理解しつつも、共に「出禁は厳しすぎる」という見解を示す。派手な応援が目立ちすぎただけで、矢沢永吉への熱い思いは自分たちと変わらない――。わかってあげて、永ちゃん!

週刊新潮WEB取材班

2019年2月18日掲載

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