『もっと言ってはいけない』著者が予見する「働き方改革」の残酷な未来

社会週刊新潮 2019年2月7日号掲載

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『もっと言ってはいけない』著者が予見する「働き方改革」の残酷な未来――橘玲(1/2)

 安倍政権が進める「働き方改革」で日本型雇用が崩壊した後には、どんな雇用形態が生まれるのか。正規非正規、男女、国籍、年齢など、あらゆる差別をなくしていけば、行き着く先は「成果主義」しかない。そしてそれに基づく「金銭解雇」制度の導入はもう避けられない。

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「リベラル」を自任する知識人やメディア、政治家たちは、これまでさまざまな場面で致命的な間違いをおかしてきた。資本主義と自由な社会よりも毛沢東の文化大革命やスターリンの収容所国家を賛美し、冷戦崩壊まで(あるいはそれ以後も)自らの過ちを認めようとしなかったのがその典型だが、最近では「働き方改革」で同じ轍を踏んでいる。さらに、その先にある「金銭解雇」についても判断を誤るだろう。

 2016年1月の施政方針演説で安倍首相は、「同一労働同一賃金の実現に踏み込む」と発言した。これが大きな衝撃を与えたのは、経営者や労働組合ばかりか、労働経済学者などの専門家に至るまで、「日本の雇用制度では同一労働同一賃金は不可能」と主張してきたからだ。

「同じ仕事なら給与などの待遇も同一であるべきだ」というのは、誰もが当然だと思うはずだ。しかしそうなると、正規と非正規の格差はどうなるのか。

 日本の会社では、正社員と派遣や契約などの非正規社員が同じ仕事をしていたり、ベテランの非正規社員が新人の正社員より高度な仕事をしていることがよくある。そして非正規社員が、「自分の方が働いているのになぜ給料がこんなに安いのか?」と訊くと、「お前が正社員じゃないからだ」とのこたえが返ってくる。

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