「石田純一」「加勢大周」が今だから語れる「トレンディドラマ」の舞台裏

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分厚いTBS、ペラペラのフジテレビ

加勢 テレビ局によって、ドラマの作り方に違いがありましたね。TBSは本読みがあって稽古があるんですけど、フジテレビは本を読みながら場当たりで進めていくスタイル。でも、フジテレビのほうが楽しさはありました。「仕事しなきゃ」って感じのTBSのドラマ現場とはちょっと違う。

石田 フジテレビのほうがトレンディっぽかったかもしれません。同じ役者でも顔が違って、TBSのときは少し血圧が上がっているような感じでした。セリフも多いし、きっちりやらされる。リハーサルも一日中やらされます。フジテレビはそのときの感覚で、「ノリで行こう!」みたいな感じで、僕には合っていたなぁ。

 TBSの社長とゴルフをご一緒したとき「なんでフジテレビのドラマは当たって、TBSのは当たらないんだ」って聞かれたんです。「簡単ですよ。セリフが多すぎます」とお答えしました。台本も、フジテレビのはペラペラで、セリフの行間も広い。特に恋愛ドラマは、セリフ自体はそんなに多くなくても、少ないセリフでも間を使ったり演じ方を工夫したりして情感が出るんです。一方、TBSの台本はセリフで説明しすぎちゃって、舞台のよう。しかも、パッと開くと1回のセリフが13行くらいあったりで、「ゲゲゲーッ!」となる。長ゼリフなんか、たまにはいいけど、基本、血圧が上昇してあまりイイ顔、ステキな顔に映らない。僕はフジテレビの薄っぺらい台本のほうが自分らしさを出せたんです。字もデカくて、行間も空いていて、それが映像の明るさにもつながったと思います。フジテレビでのキムタクなんかも、ボソボソ喋っても情感があったじゃないですか。

加勢 TBSでフジテレビの感じでやったら、全部やり直されます。もうちょっとちゃんと喋れ、とか、もっとこうやれ、とか。TBSは作り込んでくるから。作り込まずにあの感じを出せたらいいんでしょうけどね。

石田 セリフは少しくらい聞こえなくてもいいんですよ。それこそキムタクがアナウンサーみたいに喋ったら、味がなくなる。

加勢 厳しい制作会社もありました。セリフが膨大で、しかも語尾まで間違っちゃいけないの。「そうなんだよね」を「そうなんだよな」と言ったら、最初からやり直し。厳しかったなあ。

僕が登場したら視聴率が10%上がった!

石田 トレンディドラマのなかで一番印象深かったのは、僕は主演じゃなかったけど「抱きしめたい!」。さっきも言ったように、自分の役者人生の最後の作品になるかもしれなかったので。しかも、あれに出て人生が変わりましたからね。その年代の人は未だにテーマミュージックがかかっただけで、みんな思い出すんですね。

 自分にとっての会心の作は「同・級・生」かな。安田成美さんと緒形直人さんが恋人なんだけど、そこに“星の王子さま”が現れるんです。いつか私にも素敵な人が、っていうのは、女の子の願望じゃないですか。だから荷は重かったですよ。それがね、第3話か第4話まで視聴率が13%くらいで結構低迷していたのが、僕が登場してから23%を超えた。僕の演技が、というわけじゃなく、話の展開でそうなったんでしょうけど、でも数字が上がったという意味では、自分として誇れますね。

 あと一つ、TBSで90年に放送された「思い出にかわるまで」。今井美樹さん、松下由樹が出て、そんなにトレンディではないんですけど、普段一緒に遊んでいたモデルさんたちが金曜日になると「ごめんなさい、あのドラマ、生で見たいんで」って帰っていった。「いや、俺もそれに出てるけど、俺、目の前にいるけど」ってね(笑)。

加勢 僕はやっぱり、「ADブギ」だったり、フジテレビで宮沢りえさんとやらせてもらった「いつか誰かと朝帰りッ」だったり。それぞれTBSとフジテレビでの1作目ということで、緊張感をもって、充実してやったかな。

 ところで、僕が主演した「稲村ジェーン」は、トレンディドラマの流れを汲んだ、桑田圭祐さんのミュージック映画でした。僕、あれのオーディション、最初は書類審査で落とされたんですよ。通過した人の書類と落とされた人の書類が別々の箱に振り分けられていて、僕の書類は落とされたほうの箱の一番上にあったんですって。で、事務の人が僕の書類を、通過したほうに回してくれたらしいんですよ。僕がその人の好みだったらしい。その人に言われましたもん。

石田 それこそドラマになるね。でも、その人がいなくても、加勢君はいつかは出てきたでしょ。後藤久美子とか、みんな放っとかないのと同じで。

4時間泣きっぱなしを本気でやっていた

加勢 それにしても、最近のドラマは視聴率がとれません。まあ、産みの苦労もあると思うんです。いろいろやり尽くされていて、新しい要素を出しにくい。もう宇宙の話でもするしかないみたいな。だって、ドラマの中の作られた世界より、現実社会のほうがスピード感があるから。

石田 最近のドラマは全部、フォークボールなんですよね。ストレートがない。「逃げ恥」とかも変わったシチュエーションから始まりますよね。

加勢 どのドラマも若い役者を使っているけど、もう子供しか見られないなぁ、という気もします。僕らが高校生のときに憧れた浅野ゆう子さんは、あのころすごく若かったはずですけど、今の子たちより大人っぽかった。ファッション誌から出てきたような見た目とスタイルで。でも今の子はみんな内股で、いつまでキミは「かわいい」をめざすんだ、と言いたくなる。オジサンの勝手な言い分かもしれないけど、もっと自立して「かわいい」を求めすぎないでほしい。それなりの年齢になったら「きれい」を求めないと、海外からも日本人はロリータ好きだって思われちゃいますよ。

石田 たしかに心配です。男も、昔の映画スターは40代ですごく貫録があって、大人でしたね。僕なんか45歳になっても、トレンディドラマの余韻が残っていて、あんな大人の男には見えなかったけど、いまは女のほうがひどいかな。トレンディドラマに出ていた女優さんたちは、たしかにすごかった。有森也実さんとか、一つの作品の中でずっと泣きの芝居を続けられる才能があって、見ているだけでも切なくなりました。「想い出にかわるまで」で主演した今井美樹さんもすごかった。ドラマで妹に婚約者をとられるんですけど、本当に具合が悪くなって、悪寒が走って。原宿のロケで撮影時間4時間かかるような長いシーンがあったんですけど、そのときは休みなく泣きっぱなし。そういうのを、みんな本気でやってたんだなぁ。

週刊新潮WEB取材班

2019年1月27日掲載

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