「鯨食文化」の復活は? 日本のIWC脱退で注目、小型捕鯨船会社の戸惑い

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

 その昔、鯨の竜田揚げといえば学校給食でお馴染みのメニューであり、飲み屋には鯨ベーコンが当たり前のように置いてあったものだ。日本人にとって身近だった鯨肉が、日常の食卓に戻ってくるのだろうか。

 日本がIWC(国際捕鯨委員会)からの脱退を発表したのは昨年12月26日のこと。鯨愛護団体と化したIWCでの不毛な戦いに費やした年月は約37年。いつの間にか鯨肉も高価な“珍味”になってしまった。その間、食文化を支えてきたのは、調査捕鯨と、わずかな沿岸捕鯨である。

「沿岸捕鯨の主な拠点は和歌山県の太地町など5カ所。しかも、捕獲が許されているのはIWCが規制していないツチクジラやゴンドウなどの小型の鯨です。捕獲数も制限されていることから需要も年々落ち込み、北海道・網走では“採算が合わない”として2年続けて中止している。シーシェパードなどの嫌がらせもあって沿岸捕鯨も風前の灯だったのです」(水産庁関係者)

 商業捕鯨の再開は7月から。調査捕鯨の対象だったミンク鯨などをEEZ内で捕獲できるようになる。政府は全国7カ所を捕鯨の拠点にする予定だが、“足腰”の弱った捕鯨業が、すぐに元に戻るわけではない。

 年間26頭の捕鯨枠を持つ千葉県南房総市の捕鯨会社「外房捕鯨」の庄司義則社長が言う。

「海に出ればミンク鯨はよく見かけます。禁止されていた鯨種を捕獲できるようになるのは大きい。でも、(母船方式ではない)沿岸捕鯨では、捕獲できる数も限られている。また、遠くに行って鯨を捕ったとしても、持って帰るまでに肉が傷んでしまう。すぐに鯨肉が出回るということはないと思います」

 目下、日本水産などの大手が商業捕鯨を再開する予定はなく、当面は沿岸捕鯨が頼りだ。廃れかけた食文化を取り戻すのは、簡単ではない。

週刊新潮 2019年1月24日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。