香川照之演じる“ウェイウェイした金持ち”を見て、ZOZO前澤社長や紀州のドン・ファンに思いを馳せる

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 年末ジャンボを買いそびれて、東京都宝くじにしたがハズれた。確率が低くてアホらしいことは重々承知だ。それでも年1回「億単位のあぶく銭が手に入ったら」と妄想を楽しんでいる。

 といっても、住宅ローン残金を払って、あとは老後の資金に、と情けないくらい夢がない。だからお金が貯まらないのだ。お金があったらお金を生み出す・増やすことを考えるか、湯水のごとくの破天荒な消費とか寄付とか社会貢献に勤しむか。そういう上向き・前向き・寛大な精神がないから、いつまでもお金が居つかない。億単位の金を持つ人や動かしている人には、そういうことを自然にさらっとこなす才能があるのだ。

 100万円を100名にプレゼントしたZOZOの前澤友作社長もそういう人なのだろう。増やす・使う・ばらまくの好循環。非難の声も多いが、いや、すごいことじゃん、と単純に思う。

 金持ちといえば、昨年の紀州のドン・ファン謎の死も興味深かった。なんて、いけすかない金持ちに思いを馳せたのには理由がある。ウェイウェイした金持ちが跋扈するドラマ「新しい王様」(TBS・Paravi)を観たからだ。

 主演は、声が平泉成っぽいふたり、藤原竜也と香川照之で、テーマはテレビ局買収。藤原は昔、巨額の企業買収を仕掛け、世間を騒がせた実業家だ。今はアプリ開発を手掛けるも、暇を持てあます世捨て人状態。藤原を居候させているのが若手起業家の杉野遥亮(ようすけ)。セレブの仲間入りをしたくて起業したものの、商才がなく、くすぶっている。が、パリピ要員の女性を手配することには長けている。もうひとり居候がいる。看護師を目指して上京したものの、学費が払えず、うっかり闇金に手を出してしまって追われている武田玲奈だ。

 一方、香川は次々と企業買収を仕掛ける傲慢な投資家。

 藤原と香川が、東京のテレビ局買収で対決するという話らしい。青息吐息のテレビ局に鞭打つ内容になるのか、それとも起爆剤になるのか、興味津々である。

 基本的には観ていてムカつく。金銭感覚が麻痺した金持ちどもが高級レストランで肉や鮨を喰らい、女性の人権を無視してモノ扱いし、金で人を動かすことで満足しているシーンがてんこもりだから。高額消費はどうぞ存分にやってください、と思うけれど、女性の扱いはどうにもこうにも腹立たしい。すべての金持ちがそうとは限らないが、推して知るべし。高額納税者には感謝を、が私のモットーではあるが、そこはかとなくムカつくのである。

 ごく一部の富裕層を強調して描くのでヒットはしないだろうが、新奇性はある。金に群がる人々の心根を知って嘲笑するもよし。滔々と持論を展開する藤原と香川に、案外説得力があるな、と感心するもよし。できれば、金に群がる女たちの心根も知りたいところ。副読本として、漫画『15歳、プロ彼女』(大久保ニュー著・竹書房)をお薦めしたい。

 結論。踊らされるな、地に足つけろ。細々でも定額収入の継続を目指せばいい。貧乏人の負け惜しみだよね。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2019年1月24日号掲載

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