野球場の華「チアガール」がぶっちゃけトーク 薄給激務のブラック体質、意外な転身先…

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セクハラや女の嫉妬は日常茶飯事

 小学2年生からダンスを習っていたエリカさん(仮名、26歳)は、踊ることを活かした仕事に就きたい一心で、高校を卒業すると某球団のチアガールオーディションを受験。見事合格を勝ち取り、明るい未来を思い描いていた。しかし、実際に働き始めてみると、理想と現実のギャップに悩まされることになる。

「試合前のステージショー、グラウンドでのパフォーマンス、7回裏ではラッキーセブン、勝てば勝利パフォーマンスなど、確かに踊る機会は沢山ありました。でも、そうじゃない仕事の時間のほうが圧倒的に長いんです。入場ゲートでお客さんを迎えてサインや写真撮影に応じたり、ファン参加イベントの誘導をしたり、着ぐるみのアテンドとインタビュー対応の手伝いをしたり。あるいは、球団によっては球場内ツアーのガイド、ショーのMC、リリーフカーの運転などもチアガールがやるんです」

 ひとたび出勤すれば、ユニフォームを脱いで帰路につくまで、息つく暇もない。そんな過酷な状況下でもファンに声を掛けられれば、常に笑顔で“神対応”を求められるのだ。

「チアガールの場合、ファンがついても一切良いことなんてありませんよ。だからしつこく際どいポーズでの写真撮影を求めてくる人は拒絶したいのが本音です。でも、万が一私たちの対応でお客様が怒ってトラブルになれば、球団の評価を下げることにも繋がりかねません。チアガールも選手同様『球団の顔』なので、問題を起こさないようにしているんです」

 チアガールの多くは、たとえセクハラ被害に遭ったとしても、球団のイメージを守るために泣き寝入りするしかないというのが現実なのだという。さらにエリカさんは、チーム内の人間関係も大変だったとこぼす。

「チームや年度によっても違うでしょうが、私がいたチームは女社会特有のギスギスした感じが強く、自分よりもファンが多い後輩にきつく当たる先輩もいました。踊ることが大好きでチアになった私の同期も、お客さんからのセクハラと先輩からの嫉妬に耐えきれず、結局、辞めてしまいましたね」

チアはテーマパークダンサーへの踏み台

 1日の拘束時間も長く、激務の割に薄給なチアガールだが、それでも、新メンバーを募集すれば全国から応募が殺到する人気職だ。そこには、ある業界との密接な関係があるという。

 その裏事情を暴露してくれたのは、3歳から習っていた特技の新体操を活かせる仕事がしたいという理由から、チアガールの道へと進んだサオリさん(仮名、25歳)だ。

「大体どこのチームも、クライマックスシリーズが終わり、ファン感謝祭なども落ち着いた11月末~12月頭に募集が始まります。丁度この時期は、東京ディズニーランドなどのテーマパークダンサーのオーディションの合否が出るんですよ。だからテーマパークのオーディションに落ちてチアを受けるという人がものすごく多いんです。チアの給料は安くて仕事はハードだし1日の拘束時間も長いけど、毎日出勤するわけじゃないからレッスンにも通える。しかもテーマパーク志望の子は、ダンススキル、人前に出たい気持ち、それに伴う美意識もあり、チアガールに求められているものがすべて備わっていることから、受かりやすいんだと思います」

 今回お話を伺った3名は全員、チームメイトに多くのテーマパークダンサー志望がおり、なおかつ本人もチアガールを辞めてから全国のさまざまなテーマパークでダンサーとして活躍した経歴を持つ。

「チアガールを経験すると、お客さんを意識したパフォーマンスが自然と身に付くので、テーマパーク側が欲しい要素が備わるんです。だから、テーマパークに落ちた子がチアを受け、チアを経験した子がテーマパークにいくという流れが定番化してきているんだと思います」

 たとえ、イヤな客を前にしても、給料がどれだけ低くても、チアガールは笑顔で球場を盛り上げる。それが、彼女たちの夢への第一歩だからだ。

 夏の甲子園を沸かせた根尾昂や、藤原恭大らが球界入りし、来シーズンも熱いペナントレースが期待されるプロ野球だが、来季は選手だけでなく、チアガールたちにも声援を送りたい。

取材・文/ますだポム子(清談社)

週刊新潮WEB取材班

2019年1月25日掲載

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