「ひふみん」独占インタビュー 無冠「羽生善治」と躍進「藤井聡太」の今後を読む

国内2019年1月18日掲載

  • 共有
  • ブックマーク

コンピューターは「受け入れられない」

――羽生九段の転落には、若手棋士の台頭を理由とする声もある。彼らの世代では、コンピューターを使った研究が当たり前になっている。たとえば28歳の豊島将之2冠は、AI将棋の申し子。仲間同士での研究は止め、もっぱらコンピューターソフト一筋だという。一方、ひふみんは、コンピューターに否定的である。

 佐藤名人がコンピューターと戦った棋譜を見てましても、勝つには先行逃げ切りだったら勝てると思いました。つまり中盤互角だと勝つのが難しい。というのは、いうまでもなくコンピューターは読むのが早いんです。局面が複雑になれば複雑になるほど正確な読みをします。コンピューターを負かすには序盤が面白い。機械なんだけど、意外と心理作戦を使ってくるんです。出だしにそんなことをやってくるの?という作戦をとってくるんです。そのとき、われわれ“トップ棋士”が咎めてリードする。リードすれば勝つ可能性が大なんです。

 コンピューターが滑り出しに心理作戦を仕掛けてくるのは、開発者の意図だと思うの。端的に言うと素人の指し方をするの。でも20手くらい指すと定石に戻っちゃうの。ということは、プロはそれまでに、元に戻さないよう先攻しなきゃいけないんです。

 コンピューターを使って研究するのは、若手棋士の強さの秘密に大きく影響しているとは思わないんですよ。たとえば、藤井聡太さん。彼も楽しむ感覚でコンピューターを使っていると聞きました。私は古い人間であるから、将棋は人と人とのぶつかり合い、人と人をの知恵比べなので、はっきりいってコンピューターの力を借りる感覚はちょっと受け入れられない。万歩譲って、コンピューターを使って研究するのが役立つんだったら、後輩の棋士が大いに活用して勝っていくのに異存はない。

 私や大山名人は、盤と駒を使って、過去の棋譜の研究や、自分の戦いの反省をしていました。よく感想戦っていうのもやりますよね。1週間くらいかけて研究する。将棋が強くなるためには、ひとりで研究することも可能だし、感想戦でも可能だし。

 コンピューターの出番はいっぱいあると思うんですよ。医療とかね。でも将棋を対象にするのはそろそろ卒業じゃないかと思ってます。自分が開発したコンピューターが将棋のトップと戦って渡り合えたと。辛口でいうと、コンピューターが1回か2回勝っただけ。10番勝負しないと。でも勝ったから研究目的は達したと思うの。

次ページ:藤井聡太は行き詰まらない

前へ 1 2 3 4 次へ

[3/4ページ]