「相棒」66歳、「下町ロケット」54歳、「リーガルV」43歳…ドラマ主役に高齢化の波

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最大公約数の落とし穴

 ドラマの主人公が過去10年で18.8歳も年齢が上がった原因は、この視聴者層の高齢化が原因だ。

 テレビの世帯視聴率を上げようとすれば、視聴者層の最大公約数を狙いに行くのが最も手っ取り早い。よって10~20代をターゲットに番組を制作しても、全体の3分の2を占める中高年にとって関心のないテーマなら、分母は最初から3割ほどとなってしまう。その半分が視聴してくれたとしても15%に過ぎず、高視聴率を望みにくい。

 アニメ番組がGP帯から激減し、ハイティーンから1層を狙って深夜に移って行った所以である。高視聴率ドラマが、若い主人公でなくなっていったのも似た状況と言えよう。

 ドラマが中高年をターゲットとし始めると、主人公が高齢化するだけではなく、シリーズ化が進む傾向も出てくる。若年層はこれまでにない新しい物語に飛びつくが、中高年は馴染みのある設定やストーリーに食いつき易い傾向があるようだ。

 この秋のドラマトップ5も、3本までがシリーズものだ。しかも「相棒」はseason17、「科捜研の女」がSEASON18と長寿番組。「下町ロケット」も第2期となっているし、池井戸潤原作×TBS日曜劇場という座組で小が大に挑むパターンは、13年の「半沢直樹」以来5作目になる。完全なシリーズとはいえないまでも、限りなくシリーズに近い作品だ。

 また視聴率トップだった「リーガルV」も、外科医から元弁護士に替わってはいるものの、テイストやストーリー展開は5期まで放送された「ドクターX」のシリーズのような作品だ。

 さらに「SUITS/スーツ」も、米国でseason7まで放送された人気ドラマが原作。しかも1991年に放送された「東京ラブストーリー」の主演の2人(織田裕二[50]と鈴木保奈美[52])が、今回のメイン2人と来た(放送開始時の年齢)。こちらも視聴者の意識の上では、明らかにシリーズ的な作りになっている。

 こうした中高年をターゲットにしたドラマ作りは、確かにドラマというジャンルでの上位を狙うには理にかなった手法に見える。

 ただし人口構成比以上に視聴率の占有率を高齢化させる原因にもなっている。これでは若者のテレビ離れを食い止めることは出来ない。今後5~10年と長期的に見た場合、その傾向は加速し、結果としてスポンサーにとって有り難くない顧客ばかりを集めるメディアにテレビがなってしまうだろう。

 実際にテレビ広告費は17年から減少し始め、18年もその傾向は変わっていない。個々のテレビ局から見ると、ドラマの主人公を3層にするのは5議席の競争に勝つには正しいが、テレビ全体の価値を棄損しかねない。いわゆる合成の誤謬が起こり始めている。

 ここはテレビ局側が、ビジネスモデルを見直すことも含め、テレビ番組のあり方を大きく見直す時期に来ているようだ。現状の延長で今後を考える、いわゆるプレゼント・プッシュ型の発想ではなく、あるべき未来から現状を改革するフューチャー・プル型の発想で、番組制作の仕方を改革すべきだろう。

 各局の奮起に期待したい。

鈴木祐司(次世代メディア研究所代表、メディア・アナリスト)
1982年にNHK入局。主にドキュメンタリー番組の制作を担当。2003年より解説委員(専門分野はIT・デジタル)。編成局に移ると、大河などドラマのダイジェスト「5分でわかる~」を業界に先駆けて実施したほか、各種番組のミニ動画をネット配信し視聴率UPに取り組んだ。2014年独立、次世代メディア研究所代表・メディアアナリストとして活動。

週刊新潮WEB取材班

2018年12月31日掲載

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