「海老蔵」の團十郎襲名は2020年春が濃厚 負けじと落語界も「志ん生」を復活!?

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志ん生復活

 そして、日本一かっこいい男・助六を自分のご先祖と標榜する江戸っ子を演ずるのが落語だ。その落語界でも今、大看板の復活が囁かれている。

 8代目・桂文楽(1892~1971)と人気を二分した昭和の名人、5代目・古今亭志ん生(1890~1973)。その名跡の復活である。来年の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」では、ビートたけし(71)演ずる志ん生が語り部となる。ドラマには志ん生自身の人生も挿入されて、その視点で見た明治から昭和までの東京も描かれるというから、存在自体が落語のようだった志ん生という噺家が注目されることは必定だ。

 だが、その名が消えてすでに45年。半世紀近くも継ぐ者が出なかったのは、同じく名人といわれた長男の10代目・金原亭馬生(1928~1982)、次男の3代目・古今亭志ん朝(1938~2001)のいずれも、父の名を継ぐことがないまま鬼籍に入ったからだ。喧しいのは落語雀たちだ。

「志ん朝さんが継がなかったんだから恐れ多くてね。でも、あの大看板をそのままにしておくのはもったいない……と思っていたら、どうやら決まったらしいんですよ。それが古今亭菊之丞(46)だって」

 菊之丞といえば、志ん生の弟子だった2代目・圓菊(1928~2012)に入門した孫弟子に当たる。03年には異例の一人真打ち昇進を果たし、新宿末廣亭から花園神社まで、落語界で初のお練りを企画。もともと歌舞伎役者のような風貌だから似合いそうだが、やっぱり噺家らしいのは台風直撃で中断――それが志ん生に?

「なんでも席亭からOKが出て、志ん生の娘さんも認めたという。菊之丞は大河『いだてん』ではたけしさんの志ん生に落語監修もするっていうし。
可哀想なのは真打ち昇進を待ってる若手。来年春は4代目・三遊亭円歌襲披露名興行があるので真打ち昇進が秋に先延ばし。その次だと思ってた二ツ目も、再来年春に昇進はないとなると、もう待機児童みたいなものですよ」

「そういえばね、菊之丞の紋はもともと師匠の圓菊さんから受け継いだ“裏梅”なんだけど、今年になって手ぬぐいも志ん生さんや志ん朝さんが使った古今亭の紋“鬼蔦”を使ったり、9月に開催された落語協会の祭り『謝楽祭』では“鬼蔦”と菊之丞の名が入ったTシャツまで売ってやがったからね。来年1月14日からの『大古今亭まつり』(日本橋劇場)では初日(ザ古今亭勢ぞろい)と楽日(最終日:次代の古今亭を担う会)でトリだもの。もう古今亭のトップになった気でいやがるって言ってるよ」

 なんでも洒落のめす噺家仲間ではあるが、本気で襲名に反対している声はないようだ。「志ん生のいる風景」などの著書がある芸能評論家の矢野誠一氏が言う。

「確かに噺家の羽織に入った紋は、師匠からもらったものをつける人が多いけど、実は複数を使っていたり、ひいき筋からもらったもんだってあるし、自分で考えた紋をつける人もいる。先代の小さん師匠(1915~2002)に可愛がられた柳家つばめ(1928~1974)さんなんて、髑髏の紋でしたから。ですから、けっこういい加減なもので、もし志ん生さんが生きていたら、『紋? んなものぁ、どっちだっていんだ!』なんて言いそうです。志ん生の高座を生で見た人もほとんどいなくなってきている今、新しい世代の志ん生が生まれるのはいいことだと思いますよ」

 志ん生を知らない子供たちとしては、めくりにかかった“志ん生”の文字を見てみたいという思いもある。

 歌舞伎と落語、日本の古典芸能が盛り上がるのは結構なことではないか。

週刊新潮WEB取材班

2018年12月27日掲載

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