患者数170万人! エンディングノートも書けない“ぽっくり病”の基礎知識

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認知症リスクは2倍

 また心房細動を有する人は、有さない同年齢の人に比べて約3倍、心不全になりやすいとされています。

 心不全患者の5年生存率は50%を割っています。がん患者のそれは50〜60%くらいですから、非常に予後が悪くて寿命に大きな影響を与える病なのです。

 一般的に心不全とは、静脈から心臓に入った血液を、動脈へ十分に送り出せない状態を指します。心臓の働きの一部が失われたことになるので、症状としては息切れがしたり疲れやすくなる。心房細動によって心不全になると、実に心臓の働きの半分ちかくが失われてしまうこともあります。

 心房細動が心不全を引き起こす理由は二つあって、一つは脈が乱れて異常に速くなれば、そもそも心臓に入ってくる血液の量が減ってしまう。それで当然ながら血液を十分に送り出せなくなってしまうという理屈です。

 もう一つは、心房細動に罹れば、心房の収縮という大事な心臓の働きが失われることです。心房はスポイトが水を送り込むような仕組みになっていて、収縮することで心室に血液を送り出しています。ところが、心房細動はこのスポイトの収縮機能を低下させてしまう。結果、心不全が引き起こされてしまうのです。

 さらには認知症になるリスクも、心房細動の患者はそうでない人と比べ、約2倍と言われます。

 そのメカニズムは十分に解明されていませんが、認知症のリスク因子とされるのは心不全、糖尿病、高血圧。それらを抱える患者さんは、欧米の研究によると1・5倍ほど認知症に罹りやすいというデータもあるのです。その三つのリスク因子をすべて抱えた患者に心房細動が起きれば、6・75倍も認知症に罹りやすくなる。そうならないためには、まず生活習慣を変えることが必要で、日頃から心房細動を予防することが大事になってくるのです。

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 つづく(2)では“予兆”の見つけ方、運動&食事ガイドをご紹介する

古川哲史(ふるかわ・てつし)
東京医科歯科大学教授。1957年生まれ。東京医科歯科大学大学院医学系研究科博士課程修了。同大学難治疾患研究所・生体情報薬理学分野教授。著書に『臨床力をアップさせる循環器のギモン31』『血圧と心臓が気になる人のための本』など。最新刊は『心房細動のすべて

週刊新潮 2018年12月27日号掲載

特集「患者数170万人!  突然人生が終わる『心房細動』」より

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