ASKA勝訴で「井上公造」が敗訴 ワイドショー受難の時代に芸能リポーターはどこへ?

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足で稼いだネタは不滅

 なぜ芸能リポーターは地方局に出演することになったのか、芸能リポーターの川内天子氏(67)に訊いてみた。

「私は今、『朝生ワイド す・またん!』(読売テレビ)と『今日感テレビ』(RKB毎日放送:福岡)、『キャッチ!』(中京テレビ:愛知)などに出演させていただいています。東京では滅多に仕事はないですからね。ギャラですか? 芸人さんじゃありませんけど、キー局と比べたら落ちますよ」

 3都市でレギュラーを持つとは大したもの。だが、どうして東京には呼ばれないのだろうか。

「芸能リポーターを必要とするワイドショーが軒並みなくなったからですよ。きっかけは、昔の話になりますが、オウム事件でTBSがワイドショーを打ち切ったことだったと思います」(川内氏)

 1989年10月、TBS(当時は東京放送)のワイドショー「3時にあいましょう」のスタッフが、弁護士の坂本堤氏がオウム真理教を批判するインタビュー映像を放送前にオウム幹部に見せたことにより、坂本堤弁護士一家殺害事件の発端となったと指摘された、いわゆる「TBSビデオ問題」である。同局は96年になってこれを認め、放送していたワイドショーを打ち切った。

「それと同時に、大手芸能事務所の発言力が徐々に大きくなり、所属タレントのスキャンダルを取材しても放送されなくなっていったんです。最初のうちは『所属する他のタレントがドラマや歌番組にも出ているんだから』といった交渉があったらしいですけど、そのうち局側が、今で言う“忖度”するようになっていきました。それでも頑張る方もいらっしゃいましたが、排除されていったんです。バブルもはじけて制作費も減り、ワイドショーも減っていく中、私たちが取材しなくても、芸能人自らSNSで、自分から発信するようにもなりましたからね。少しでも間違った情報を話すと、コンプライアンス違反と言われかねません。それで東京の情報番組は、週刊誌やスポーツ紙の記事を紹介するだけになっていったんです」(川内氏)

 それにしても、なぜ芸能リポーターは地方で生き残っていけるのだろうか?

「地方局はキー局との差別化を図ることがウリになるので、逆に芸能リポーターを使うんです。取材は東京でやることが多くなるのですが、ニュースのウラ話的な解説をすることに需要があるんです。それでも今は、地方局であっても暴露話的なものはNGです。コンプライアンスも厳しいですからね。ですから、かつてと比べるとソフトな話しが多くはなりますが、やはり足で稼いだネタというのは評判がいいんです」(川内氏)

 芸能ネタは、大阪や福岡では、まだまだ根強い人気があるようなのだ。そんな中、井上氏が入手した未発表曲はインパクトがあったわけだが……。

「そうですね。今は、ご本人のASKAさんに許可を取っていないのであれば、無断で放送するなんて許されることではありませんから。昔なら『かえって宣伝になるだろう』なんて考え方もあったかもしれませんが……」(川内氏)

 今回の裁判で、芸能リポーター全体の信用が落ちるということにはならないか。

「可能性はゼロではないでしょう。もともと厳しい状況ですし、キー局のように芸能リポーターがいなくてもやっていけるわけですから。でも、私たちがいることで、週刊誌やスポーツ紙を読み上げるだけよりも、情報の説得力、力強さが生まれてくると信じて、取材を続けていくしかありません」(川内氏)

2018年12月24日掲載

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