浜崎あゆみ 宇多田カバーで見せた歌姫の自意識と平成の終わり

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浜崎の自意識と平成の終焉

 そんな浜崎が先日のFNS歌謡祭で選んだのは自分の楽曲ではなく、宇多田の「Movin’on without you」だった。「がっかり」という反応も、「浜崎、全盛期を彷彿とした」という反応も両方あったようだ。しかしどちらにせよ、あれだけ自意識の強かった女性が、20周年イヤーだというのに、ライバルとも言える同世代女性の歌を歌うとはちょっとした衝撃を受けた。

 とはいえFNS歌謡祭でのパフォーマンスは、とても彼女らしかった。タトゥーも丸見えの露出度の高い衣装、デジタルサウンド全開の音楽、男性ダンサーの肩に手を置き例のビブラートで歌い上げる。彼女が輝いていた平成の、ザッツ浜崎あゆみオンステージ。しかもあのタトゥー、確か当時の交際相手の長瀬智也と入れてたやつだ、と思い出す。昔だったら絶対出せなかっただろう。タトゥーそのものも、ジャニーズを匂わせる印も。だけど時代は変わった。というか、彼女が愛した時代は終わってしまったのだ。

 今年は平成最後の紅白にさえ出ないという。きらびやかで、自己愛が強くて、評価されることへの飢餓感を前面に出し続けた平成の申し子のような浜崎。先のFNS歌謡祭含め、20周年なのに自身の楽曲を大舞台で披露しないまま終わる事態は異常な気もする。

 彼女が所属するエイベックスは、顔かたちと素行が派手なスクールカースト上位タイプのアーティストが多い。だから中高生から人気を集めるのはとてもよくわかる。しかし社会人になれば、意外と自分の好きなことに打ちこんできた職人タイプが頭角を表したりするように、音楽業界も社会も成熟し、多様化したということなのかもしれない。そんな中いつまでも、平成の女子高生たちの影の中に浜崎あゆみはひとり立ちつくしている気がする。浜崎が本当に没落した時がいよいよ平成の終わり。という感じがするが言い過ぎだろうか。年末、紅白の裏で何かやらかさないか心配である。

(冨士海ネコ)

2018年12月15日掲載

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