産みたい人は産める――政府はそのための旗振りを!(石田純一)

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石田純一の「これだけ言わせて!」 第14回

 先日、出入国管理法改正案が衆議院を通過した。外国人労働者の受け入れについての議論が生煮えのままなのが問題だが、でも、いずれにせよ、日本は外国人をもっと受け入れないとやっていけないというのが現実ではないだろうか。外国からやってくる労働者の人権や人生まで考えてあげたうえで、共存するしかないと思う。

 だが、そもそも、その必要が生じた原因は少子化だということを考えなければいけない。IMF(国際通貨基金)は、日本でこのまま少子化が進むと、40年後にはGDP(国内総生産)が25%も下がる、という試算を発表したばかりだ。西欧や先進国のGDPは、ほぼ人口と比例する。日本の人口は1億2千万人台だが、ドイツは8千万人台で、イギリスとフランスは7千万人弱。ということで、現在、日本とドイツ、イギリス、フランスのGDP比は12:8:7:7で、日本のGDPはドイツのほぼ1・5倍になる。ところが、少なくとも日本は、これからはどんどん縮小するわけだ。

 いま日本が国を挙げて取り組むべきなのは、若い人が子供を産みやすい環境づくりではないのか。その意味では、現在は高齢者に手厚い福祉や補助金を、若い世代に向けていく必要もあると思う。

 経済産業省の調べでは、日本の若者のうち、日本は子供を産みやすく育てやすい、と感じている人の割合は45%。一方、スウェーデンではそれが9割を超えている。少子化には女性の社会進出や、それにともなう晩婚化など、一筋縄では解決できない状況がからんでいるとはいえ、状況を分析している暇があったら、とりあえず子供を産みやすく育てやすい環境を整える努力こそすべきだろう。

 で、たとえば……。不妊に悩んでいるカップルは、いま世界に5千万組にもなるそうだが、実は、わが家でも末っ子は顕微授精で生まれている。要するに体外受精で、不妊治療のなかでも自然から一番遠い。なにしろ卵子に精子が出遭うのではなく、元気のいい精子を選んで卵子のなかに注入し、受精させて数日置き、着床できる胚盤胞の状態まで育ったうえで凍結保存しておいたものを子宮に戻すのだ。しかも、妻は医師から、年齢的な問題から出産に至る確率は10%もないと宣告されていた。若いときはフワフワしていた子宮がせんべい布団みたいになってしまい、胚盤胞を戻しても着床しにくいという話だった。それでも初志貫徹でおなかに戻し、おかげさまで奇跡的に末っ子を授かったのだが、この受精は、それなりに金額がかさむのが問題だ。

 そこで提案。こうした不妊治療の費用は、すべて政府からの補助金で賄えるようにするのである。消費税の軽減税率など、ややこしいから潔くやめて、子供を産みたい人に産ませるための予算に回そうではないか。空物語ではない。現にフランスでは、回数の制限こそあるものの、体外受精は全部タダだ。

 いまのニッポン、妊娠についての知識も不足していて、学校では避妊教育はしても、妊娠教育はほとんど行わない。だから、仕事などでキャリアを積んでから40歳くらいで子供を産もうとしたができない、という女性が意外に多い。幸い産めても、今度は待機児童問題に悩まされる。しかし、政府が旗を振って、子供を産みたい人は躊躇なく産めるようにすれば、日本は子供を産みにくく育てにくい、と思っている人たちの意識もまったく変わるはずだ。

 産みたい二人が断念するなんて、この少子化のなか、もったいなさすぎる。産みたければ産める。そういう環境づくりのためにこそ、ぜひお金を投じてほしいと願う。

石田純一(いしだ・じゅんいち)
1954年生まれ。東京都出身。ドラマ・バラエティを中心に幅広く活動中。妻でプロゴルファーの東尾理子さんとの間には、12年に誕生した理汰郎くんと2人の女児がいる。元プロ野球選手の東尾修さんは義父にあたる。

2018年12月6日掲載

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